特別受益とは?特別受益がある場合の相続分計算方法!

相続は亡き人が長年作り続けてきた遺産を受け継ぐ大切な手続きですが、その過程は複雑でファイナンシャルプランナーや弁護士といった資産運用や法律の専門家などを交えて対応することも多々あります。その中で、特別受益と呼ばれる制度があります。これを知っておくと色々と相続に関するトラブルも回避できる場合があります。今回はこの特別受益に関して紹介します。

特別受益とは?


特別受益とは「相続人の中で被相続人から遺贈(遺言による財産の無償譲渡のこと)や生前贈与を受けた人がいて、他の相続人と不公平になるのを是正する」という意味があります。

これを分かりやすく説明すると次の通りです。

①相続人が一人ではなく何人か存在する場合,民法によって各相続人に対して相続財産の配分(この配分の割合を法定相続分という)がなされる。
②ただし、各相続人の相続分を相続人同士の協議によって法定相続分と異なる割合も可能である。
③しかし、協議が成立しない場合は通常通り法定相続分によって相続財産を配分することになるが、それによって相続人同士の不公平を招く恐れがある。
④遺贈による相続は被相続人が自由に決めてはいいことではあるが、これが特定の相続人に対して過度の割合であれば不公平を招く恐れがあることに加え、生前譲渡によって相続財産ではなくなるのでやはり歪みを生むことになる
⑤そのため、遺贈があった場合や相続財産の一部を事前に受け取っていたといえるような相続人がいる場合には、その事前に受け取った財産や利益も含めた上で相続分を決定できるのが特別受益である

相続は、法的な絡みも含めた手続きが必要になりますが、結局見えないところで被相続人と懇意にしている相続人が独自に動いていたため、他の相続人との間に不公平や混乱を招く可能性があるので、それを是正して本来の相続の形にしようという狙いがあります。さらにその対象には⑤の通り「事前に受け取った財産や利益」とあり本来なら相続財産には当てはまらない財産までもが含まれるということになります。

どこまでが特別受益にあたる?

特別受益はその性質上、基準を定めるのが非常に難しいものですがどの程度までが該当するのかを紹介します。

特別受益の対象となるのは,遺贈と生前贈与の場合だけ

特別受益が前述の通り「本来相続財産じゃない財産までも対象に含む」という性質上もあって、次のものに原則として限られています。

■遺贈
■婚姻や養子縁組のための生前贈与

ただし、他にも「生計の資本としての贈与」と呼ばれるカテゴリも対象になります。

では、この対象物に該当するものを細かく紹介すると次の通りです。

・遺贈:遺言によって譲渡された財産など
・婚姻や養子縁組のための生前贈与:持参金や支度金など
・生計の資本としての贈与:生前に譲渡された財産(住宅購入資金、学費、事業資金)など

このうち、学費は特に私立の医学部の学費や海外に留学する費用などは相当な金額になるため特別受益の対象になりやすいと言われています。ただし、実質的には生前贈与といえるような例外はあるものの「売買によって譲渡された財産」はこの限りではありません。なお、事業資金や養子縁組のための生前贈与についての詳細は後ほど紹介します。

ただし、注意をして欲しいのが「定義に該当するものだから確実に特別受益の財産になるとは限らないこと」ということです。つまり、特別受益は次のような要素があったので該当しない可能性も抱えています。

■収入:会社の収入や家賃収入といった不労所得の有無
■社会的地位:会社の役職の有無
■生活環境:生活保護といった行政サービスの適用の有無
■教育水準:被相続人の学歴

確かによく考えてみたら、一流大卒で一流企業に勤務して年収が1,000万超の被相続人と高卒で年収300万ほどの被相続人が、同じ金額を生前に贈与したとしても印象は異なります。もちろん、法的な根拠による力は強力だといえますが、特別受益について考える場合にはこういった点にも留意することが大切です。

そして、仮に特別受益の対象と判断された財産があっても、今度はその権利がある特別受益者の存在も判断しなければ話が繋がりません。もちろん、それについても次の通り定められています。

■相続人:特別受益の対象になる
■代襲者:状況によっては特別受益の対象となる
■相続人になる見込の人:状況によっては特別受益の対象となる
■配偶者や親族:原則該当はしないが可能性が全くないとも言えない

状況によっては特別受益の対象となるというのは、例えば代襲者に関しては「代襲前に贈与があっても相続人ではないため特別受益者にならないものの代襲後であれば相続人になるため特別受益者に該当する」といった状況を意味します。要は、本来なら該当するのかあやふやだけど、状況に関する情報を収集して整理をした結果、相続人として特別受益者になる判断されることが一般的には多いです。

以上が特別受益者となるまたは該当しうる方々です。よって、これら以外の第三者は相続人ではないことに加えて「相続人同士の不公平を是正するという目的に該当しなければならない」の特別受益の本来の趣旨には該当しないため特別受益者となりません。そのため、祖父母から孫への贈与は該当しないことになります。

ただし、相続人と同様の立場であると認められる場合は特別受益の対象になる場合もありますので、一概に「法的にはこうなっているので対象にはならない」と断言するのではなく、やはり相続人以外の方と同様に客観的に現状をリサーチして厳格に精査することが重要です。

このように特別受益は、対象となる財産も特別受益者も法的なことに加えてケースバイケースの概念も加わってくるためか、判断をするのが決して簡単ではないものと言えます。

なお、次のような場合も特別受益の是非を問うことになります。

結婚式や結納は特別受益とならない場合が多い


婚姻のための贈与は特別受益に含まれるとありますが、厳密には「結婚式や結納に関するお金」は含まれないことが多いです。これは、特に結納に関しては「婚約の証となるお金または花嫁衣装などの品物」という定義に当てはまることで、遺産の前渡しには該当しないからです。

独立のための事業資金支援などは特別受益となる場合が多い

将来独立して開業するための事業資金およびそれの支援金は特別受益に該当することが一般的です。開業の規模によりますが、それなりのお金が動く以上は特別受益の対象になりやすいということです。なお、事業資金に限らず、店舗や土地といった不動産も対象になりやすいことに留意しましょう。このように、事業資金が特別受益として認められやすいのは「事業展開すれば一定の雇用や経済状況の活性化に繋がり社会貢献になるため」という見方もあるからです。

特別受益がある場合の相続分計算方法


通常の法定相続分および特別受益があった場合の相続分の計算方法を紹介します。

通常の法定相続分

法定相続分とは「法的に定められた相続人の取り分」を意味しますが、これは配偶者が常に相続人、配偶者以外は子、直系尊属(父母や祖父母)、兄弟姉妹と順位が決まっています。

そして、法定相続分は組み合わせによって次の通り異なります。

■配偶者のみ:全額
■配偶者と子が相続人の場合:配偶者1/2、子1/2
■配偶者と直系尊属:配偶者2/3、直系尊属1/3
■配偶者と兄弟姉妹:配偶者3/4、直系尊属1/4

また、子、直系尊属、兄弟姉妹の人数が複数いる場合は人数と分母を乗じた分母を採用します。そのため、次の通りになります。

■配偶者と子(長男、次男、長女)が相続人の場合:配偶者1/2、子1/6(2×3人)
■配偶者と直系尊属(父と母):配偶者2/3、直系尊属1/6(3×2人)
■配偶者と兄弟姉妹(姉と弟):配偶者3/4、直系尊属1/8(4×2人)

特別受益がある場合の法定相続分の実例計算

さて、今度は特別受益となる財産があった場合の計算です。

これは次の式を利用します。

(相続開始時の財産(遺贈を含む) + 特別受益に該当する生前贈与) × 相続分 - 特別受益

そして、次のようなケースで計算してみましょう。

■被相続人の財産:6,000万円(相続開始時の財産である)
■相続人:配偶者と長男、次男の合計3人
■特別受益:長男と次男にそれぞれ事業資金1,000万円を生前贈与している

まず「相続開始時の財産(遺贈を含む) + 特別受益に該当する生前贈与」を計算します。

6,000万円 + 2,000万円 = 8,000万円

そして、子に対して次の計算がされます。

■長男:8,000万円 × 1/4 = 2,000万円
■次男:8,000万円 × 1/4 = 2,000万円

しかし、子2人は特別受益の対象となるため、さらに1,000万円ずつ引かれます。

■子2人:4,000万円 - 1,000万円 = 1,000万円

よって、子2人1,000万ずつが今回それぞれの相続する金額となります。

なお配偶者は特別受益を受けていないので通常の法定相続分で計算されるため相続金額は4,000万円となります。

ただし、これはあくまで事例のため他にも様々なケースが考えられます。

例えば、せっかく苦労して手続きした相続が終わった後に特別受益する財産が見つかったといった場合です。この場合は、遺産分割協議をやり直しなどの選択が求められます。ただし、遺産分割協議のやり直しのためには正当な理由が必要になることも多く、なかなか難しいです。

こういったこともあるため、特別受益の計算をする場合は相続分の計算をする際は弁護士やファイナンシャルプランナーや弁護士といった資産運用や法律の専門家に相談することが無難な対策でしょう。

まとめ

相続はそこに至るさまざまな人間関係によっても左右されがちなため、どうしても不公平と思う事態が想定できます。それを少しでも回避または軽減させるために特別受益と呼ばれる制度ができています。判断する基準が多少なりともあやふやであることもあるものの、この制度の利用は大いに相続をスムーズに進めることになるでしょう。ぜひとも今回の内容を踏まえていつか来るだろう相続に備えてください。

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