中小企業は退職金をいくらもらえる?中退共退職金制度も紹介!

退職金と言えば、長年同じ会社に在籍してきた会社員が定年退職を迎えたときに受給されるものですが、その具体的な仕組みについては意外と知らない人も多いと思います。実際見てみると、その仕組みに加えて色々なタイプの退職金制度があることに気が付くはずです。老後の資産運用のためにも退職金のことを紹介するのでぜひとも知ってみましょう。

中小企業の定義は?


中小企業の定義は次の通り中小企業庁が定めている定義が一般的です。

■製造業その他:資本金額又は出資総額が3億円以下の会社又は常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人
■卸売業:資本金額又は出資総額が1億円以下の会社又は常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人
■小売業:資本金額又は出資総額が5千万円以下の会社又は常時使用する従業員の数が50人以下の会社及び個人
■サービス業:資本金額又は出資総額が5千万円以下の会社又は常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人

ただし、中小企業関連立法では、下記の場合でも中小企業とすることがあります。

■ゴム製品製造業:資本金3億円以下または従業員900人以下
■旅館業:資本金5千万円以下または従業員200人以下
■ソフトウエア業・情報処理サービス業:資本金3億円以下または従業員300人以下の法人

このように、中小企業にも企業の資本金や従業員、業種によってさまざまに分類されます。

中小企業の定義は?


中小企業の退職金について分析します。

(1)退職金の平均額
多くの中小企業の退職金の平均額は、東京都産業労働局の「中小企業の賃金・退職金事情調査」(2016年)によれば次の通りとなります。なお、勤務年数による退職給付額の平均を学歴ごとに記しています。

・大学卒
■勤続年数5年で自己都合の退職金平均:44万円
■勤続年数5年で会社都合の退職金平均:62.5万円
■勤続年数15年で自己都合の退職金平均:225.1万円
■勤続年数15年で会社都合の退職金平均:284.7万円
■勤続年数25年で自己都合の退職金平均:562.6万円
■勤続年数25年で会社都合の退職金平均:646.7万円

・高専・短大卒
■勤続年数5年で自己都合の退職金平均:35.9万円
■勤続年数5年で会社都合の退職金平均:51万円
■勤続年数15年で自己都合の退職金平均:186.2万円
■勤続年数15年で会社都合の退職金平均:235.6万円
■勤続年数25年で自己都合の退職金平均:468.1万円
■勤続年数25年で会社都合の退職金平均:540.7万円

・高校卒
■勤続年数5年で自己都合の退職金平均:32.1万円
■勤続年数5年で会社都合の退職金平均:47.1万円
■勤続年数15年で自己都合の退職金平均:174.7万円
■勤続年数15年で会社都合の退職金平均:225.7万円
■勤続年数25年で自己都合の退職金平均:444.7万円
■勤続年数25年で会社都合の退職金平均:523.5万円

(2)自己都合と会社都合の退職金分析
同じ勤続年数であっても、学歴及び退職が自己都合または会社都合によって、退職金の差がはっきりと出ていることが分かります。

これは会社都合が「会社によって契約が解約する旨が伝えられて労働者が承諾をすることで実現する退職」であるためです。例えば、倒産や破産などで経営難に陥った場合の退職勧告などが該当します。よく大企業などが断行してニュースなどでも報道される「希望退職」もこれに該当します。

なお、解雇との違いは次の通りです。

■解雇:労働者の意志に関係なく行われる会社側の一方的な契約解除
■会社都合:会社側からの退職に関する働きかけに対して労働者も同意しての契約解除

このように、定義そのものは似て非なるものと理解してください。

なお、余談ですが失業手当に関しても会社都合の場合は次の通り自己都合よりも早く認定され支給されます。

■自己都合:待機期間7日後に3カ月の待機期間を経て支給
■会社都合:待機期間7日間後に1カ月の待機期間を経て支給

ただし、履歴書上にはどちらの退職であっても「自己都合または会社都合による退職」の形ではっきりと残るため不利になる場合もあり、退職に関しては慎重に決断をする必要があります。

(3)退職所得
退職金が支給された場合は所得税の対象となります。具体的には「退職所得」と呼ばれる区分が適用されます。

主な特徴は次の通りです。

■退職により勤務先から受給される退職手当に対する所得のことである
■適格退職年金契約に基づいた生命保険または信託会社から受給される退職一時金も該当する
■山林所得などと同様に他の所得と合算せず分離して課税する申告分離課税方式である

退職所得の計算式ですが次の通りです。

(収入金額(源泉徴収前の金額) - 退職所得控除額) × 1/2 = 退職所得の金額

このうち、退職所得控除額は勤続年数ごとによって次のように計算します。

■20年以下:40万円 × 勤続年数(80万円未満は80万円)
■20年超:800万円 + 70万円 × (勤続年数 - 20年)

なお、次の点に注意してください。

■退職所得控除額は、障害者になったことが直接の原因で退職した場合は上記の方法により計算した額にさらに100万円加算される
■前年以前に退職金を受給されたまたは同一年中に2か所以上から退職金が受給されたときなどは控除額の計算が異なることがある

では、次の事例をもとに退職所得を計算してみます。

会社員Aさん(65歳、勤続年数40年2か月、退職金3,500万円)の場合

①勤続年数が40年2ヶ月のため41年(端数の2ヶ月は1年に切上げされる)
②800万円 + 70万円 × (41年 - 20年)=2,270万円
③3,500万円 - 2,270万円 = 1,230万円
④1,230万円 × 1/2 =615万円

よって、615万円が退職所得として課税対象になります。

中退共退職金とは?

中小企業向けの退職金制度である「中退共退職金」について紹介します。

中小企業はどうしても大企業と比べて資本金や従業員数に及ばないことが多く独自の退職金を設けることが難しい状況となっています。そこで、それを打破するために制定されたのが本制度です。通称「中退共」とも訳されます。ただし、国民年金基金と言った他の制度と異なり「あまり宣伝がされていないせいもあってか知名度が高い割には加入率も低いこと」「そもそも加入条件は満たしているものの制度を知らずにいる中小企業が存在すること」といった問題を抱えています。しかし、前述の通り、その仕組みから非常に有効な退職金制度であると察することが出来るので、この機会にぜひ加入を検討してみることをおすすめします。

制度の主な概要は次の通りです。

■正式名称は「中小企業退職金共済」である
■中小企業退職金共済法に基づいて昭和34年に制定された
■退職金の制度を設けることが困難な中小企業が多いことに起因して制定された
■制度の目的は「中小企業の相互共済と国の援助で退職金制度を確立し、これによって中小企業の従業員の福祉の増進と雇用の安定を図り企業の振興と発展に寄与すること」とある
■事業主はいかなる理由があっても受給できない
■使用人兼務役人は条件によっては加入できる(部長や工場長など)
■退職金は、中退共から直接従業員に支給される
■退職理由に関係なく支給される退職金の変動はない
■掛金は一部を国が助成してくれる
■管理体制が簡単である
■退職金は掛金月額と納付月数に応じて定められている
■法人の場合は損金、個人の場合は必要経費として掛金は全額非課税となる
■パートタイマーなども対象である

中退共退職金の支払いについて

中退共退職金ですが支払う金額についてはいくつかのパターンがあります。

退職時に全額支払う

「一時払い」と言う形で予定している退職金を全額受給することができます。

ただし、次の点に注意しましょう。

■「退職手当」とみなされて退職所得として所得税の対象となる
■受給するためには「退職所得の受給に関する申告書」という書類を提出する必要がある
■中退共制度の場合は「退職金(解約手当金)請求書」に「退職所得申告書欄」を設けていてこれの記載によって手続きは完了する

なお、退職所得については前述を参照ください。

退職後に分割払い

退職金を5年間または10年間にわたって分割して受給することもできます。

ただし、下記の要件を全て満たすことが必要です。

■退職日に60歳以上であること
■退職金の額が一定以上であること(5年間の分割払い:80万円以上、10年間の分割払い: 150万円以上)

なお、一時払いと分割払いを組み合わせて受給できる一部分割払いも可能です。

中退共退職金の計算方法


退職金の計算方法は次の通りです。

基本退職金 + 付加退職金 = 退職金

この2つの退職金の仕組みも紹介します。

・基本退職金
■掛金月額と納付月数に応じて固定的に定められている金額
■予定運用利回りは1.0%であるが法律の改正によって変動する場合がある

・付加退職金
■基本退職金に上積される金額
■運用収入の状況などに応じて定められる

なお、次の点に注意しましょう。

■11月以下の場合は支給されない
■長期加入者保護により12か月以上23か月以下の場合は掛金納付総額を下回る額となる
■24か月以上42か月以下は掛金相当額になる
■43か月からは運用利息と付加退職金も加算されるなど有利になる

他の制度でも共通している点と言えますが、長期間加入すれば退職金は大きくなり、逆に短期間加入では掛金を下回る退職金しか受給できない仕組みとなっています。

掛金自体は、ある程度の金額が要求されますが、原則全額非課税と言うこと、退職理由に左右されないといったメリットを考えると計画的に掛金を払い続けて制度に加入していくことをおすすめします。

まとめ

退職金が会社の規模、退職の仕方によって受給される金額が左右されること、退職金にかかってくる税金の存在、中小企業退職金共済などを紹介しました。大企業と比べて中小企業は退職金制度に対して脆弱な状況ですが、中退共の存在もあるので積極的に取り入れてみると従業員の育成や士気にも良い影響をもたらしてくれることでしょう。また従業員にとっても退職金のことを知ることで、会社の仕組みが少しは理解できることに繋がると言えます。より良い会社づくりのためにも退職金に対する関心は広い視野で持っていきましょう!

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