自筆証書遺言とは?メリット・デメリットと注意点!

大切なご家族が最期の時を迎える時、悲しみと共に「相続」と呼ばれる遺産の分配と相続税の納税が待っています。それらの問題を素早く解決するためにも、しっかりと事前に対応するべきことを把握しておくことが求められます。その中でも被相続人が残す遺言書は、その仕組みを知っておかないと取り返しのつかないことにもなりかねません。今回は、その遺言書の中の一つ自筆証書遺言を中心に遺言書の基本について紹介します。

自筆証書遺言とは?


自筆証書遺言とは、文字通り「被相続人自ら文章を書くことで効力が出る遺言」のことです。相続を扱ったドラマや映画などでも登場していることもあって、数ある遺言書の形式の中でもっとも知られています。

自筆証書遺言のメリット

自筆証書遺言の持つメリットを紹介します。

費用もかからず簡単に作成できる

自筆証書遺言は、「費用はかからない」という特徴を持っています。そのため、遺産についての方針が固まった段階で作成することができます。なお、作成の具体的な流れや必要事項については後述で紹介します。

遺言の存在や内容を秘密にできる


遺言にはいくつかの形式があり、それによっては「作成の過程で遺言書の中身が分かってしまう」ということがあります。しかし、自筆証書遺言の場合は全て被相続人が作成することになるためその心配がありません。そのため、いざその時が来るまでは大切に保管されている限りは、自分の資産をどうするかについては被相続人のみが把握することができます。

いつでもすぐに書き換え変更可能

作成した自筆証書遺言を書き換えすることも可能です。そもそも、民法上では次のような決まりがあります。

「遺言の全部または一部を撤回する場合、遺言作成者は新たに遺言を作成し、その遺言で前に作成した遺言の全部または一部を撤回する旨を内容にすれば前の遺言は撤回したものとみなされる(民法1022条)」

このため、自分で書いた遺言を書き換えすることに加えて「破棄して遺言自体をなくすこと」も可能です。「昨日まではAに遺産の全てを譲ろうと思っていたけど、考え直してAとBにそれぞれ半分ずつ譲ろう」という方針の転換が可能であるということです。ただし、他の遺言書の形式でも書き換えや撤回は可能ですが、手続きが面倒なため実質的には遺言書の中身を被相続人のみが把握することができる自筆証書遺言ならでは仕組みとも見て取れます。

自筆証書遺言のデメリット

「いつでも手軽に」という言葉が当てはまるくらいの感覚で作成ができる自筆証書遺言ですが、次の通りのデメリットもいくつかあります。

<中見出し>遺言書の隠匿、偽造、紛失の危険性がある
せっかく被相続人が作成した遺言書ですが、下記の理由によって隠蔽、偽造、紛失する恐れがあります。

・死後、遺言書が発見されなかった
・遺言の内容に危機感を持った相続人による工作があった
・相続人の都合がいいように偽造された

これが自筆証書遺言の抱えるデメリットの中でも特に問題とされることです。日頃から相続人とのコミュニケーションをすることで、少しでもこれらが起きるリスクを減らしていくことが求められます。

遺言としての要件が欠け、効力が無効になってしまう可能性がある

基本的に、遺言書は法的に則った形式で作成されなければなりません。ただし自筆証書遺言の場合は「検認」がないため、せっかく作成したものが無効とされる恐れがあります。なお、検認については後述で紹介します。

執行時に家庭裁判所の検認の手続きが必要となる

被相続人が亡くなってから遺言に基づいた遺産の相続が始まりますが、その前までに家庭裁判所に「検認」と呼ばれる手続きを請求しなくてはなりません。

検認とは「遺言書の発見者および保管者が家庭裁判所に遺言書を提出することで、相続人に対して遺言の存在と記載内容を確認する」という手続きです。偽造や変造、隠匿および滅失等を防止して遺言書を確実に保存するという目的のために行われます。

ただし、この手続きは「遺言書の中身に対して有効か無効かを判断するものでない」ということになります。そのため「有効か無効かについて争うことは問題がない」と言うことにもなりますので十分に注意してください。そして、自筆証書遺言の場合はこの検認が必ず必要となってきます。

自筆証書遺言を書く前に必ず確認

自筆証書遺言の基本的な性質が分かったところで、書く内容について必ず確認しなければならないポイントを紹介します。

どの遺産を残すのか整理

数ある遺産の中から何を受け継いで欲しいのか整理することは必要不可欠です。これは、相続を素早く進めるためにも必要なことだからです。

そのため下記のポイントは押さえましょう。

・どの程度の遺産があるか
・遺産の具体的な中身
・5W2Hの考え方も取り入れてもよい

また法的義務はないものの「財産目録」と呼ばれる「財産がどれだけあるのか把握できる一覧表の作成」も有効です。特に相続税の対策のためにも作っておきましょう。

どの財産のことを言っているのか分かりやすく

曖昧な表現は誤解や混乱を招く恐れがあるため、誰が見ても分かるような財産の表記にも気をつけていきましょう。

具体的には下記の例が該当します。

「土地は相続人Bが相続すること」

これでは、どの土地の事か分かりません。そのため、下記のような形にするとよいでしょう。

「○○市○○町○○番地にある500㎡の土地Aは相続人Bが○○年○○月○○日をもって相続すること」

これなら住所と具体的な日付も特定されていて分かりやすいです。

特に自筆証書遺言のような被相続人がすべてを作成する遺言の場合は起こる可能性が高いため注意が必要です。そのため、土地なら「登記簿」といったように関連する書類も参考資料にして自筆証書遺言を作成することも一つの手です。

相続人の範囲を指定

遺産分割の割合や残す遺産を決めたら、遺言書に登場させる相続人を決めましょう。これを怠ると誰が相続人として実際に成立するのか混乱する恐れがあります。

そのため下記のポイントは押さえましょう。

・遺言書内に登場させる相続人は必ず氏名を表記すること
・具体的な相続内容を記載すること

必ず自分ひとりで作成

前述の通り自筆証書遺言とは「被相続人自ら文章を書くことで効力が出る遺言」です。色々と遺産について相談したくなる気持ちも考慮できるものの、遺言書自体は被相続人が最後まで記入する必要があります。

なお、下記に関しては守らないと無効となるので注意してください。

・代筆、音声や映像で残さない
・2人以上で共同作成もしない

必ず手書きで

自筆証書遺言の場合は、パソコンやワープロなどで作成しても「遺言書の偽造防止」のために無効となります。必ず手書きで作成してください。

そのため、下記のものを準備しておくとよいでしょう。

・ボールペンや油性ペンなど印字が消えないペン
・紙
・封筒(透かし防止がなされているものがおすすめである)

日付を記載

法的に必要なことであることはもちろんのこと、被相続人自身がいつ遺言書を作成したのか分かるようにするためにも必ず日付は年月日まで分かるように記載するようにしましょう。

日付記載時には下記のことに注意しましょう。

・日付の書き方は西暦でも和暦どちらでも問題ない
・第三者が見ても特定できる位置、読み方で書く

日付を書く理由としては、万が一にも自筆証書遺言が複数発見された場合は、もっとも新しい遺言内容が採用されるため、遺言者が満15歳に達していることや遺言の意思能力があったかなどを判断するといったことも挙げられます。

押印をする


自筆証書遺言の場合は、文書を作成した後に署名に加えて「押印」がなければ無効となります。必ず印鑑を用意しましょう。

なお、押印時には下記のことに注意しましょう。

・シャチハタはなるべく避けて被相続人の実印にする
・形式上の義務ではないが開封していない証明となるため遺言書を書いた紙を入れる封筒にも封印する

紛失等に注意

遺言書の紛失は、遺族が把握していなければ見つけるのは困難です。本来の相続の流れができなくなる恐れもあるので、事前に遺族には保管場所を教えておくことをおすすめします。

遺言内容を書き直す場合は

遺言内容の書き直しをしたくなった場合、前述の通りのこともあっていつでも修正や書き換えをすることが認められています。なお、修正の際は、該当箇所に二重線を引いて訂正印を押して近くに書き加えることになります。ただし、あまりに修正箇所が多い場合はそもそも書き直しても問題ありません。

自筆証書遺言以外の遺言方法は?

自筆証書遺言以外の遺言書の形式について紹介します。

公正証書遺言

公正証書遺言は、「公証役場にて公証人が立ち会ったうえで効力が出る遺言」のことです。

主な特徴は下記の通りです。

・証人:2名必要
・遺言書の中身:2名の証人者には知られる
・保管:原本は公証役場にて保管され、謄本は被相続人が保管
・費用:有料でかつ遺産の合計額によって費用は上がっていく
・家庭裁判所の検認:不要
・その他:紛失や偽造などの不正が行われることもないなど安全であるが有料である

秘密証書遺言

秘密証書遺言は、「内容を秘密にしたまま存在のみを証明してもらう遺言」のことです。

主な特徴は下記の通りです。

・証人:2名必要
・遺言書の中身:秘密にできる
・保管:被相続人が保管
・費用:公証人に対して支払う
・家庭裁判所の検認:必要
・その他:本形式の仕組みの関係であまり利用されていない

まとめ

自筆証書遺言の基本的な仕組み、事前に考えなければならないポイント、他の遺言書の形式などを紹介しました。遺産は、預貯金や有価証券、土地などの不動産などプラスになるものから、負債などマイナスのものまで財産とみなされた数々のものが対象となります。そのため、被相続人が事前に把握しておくこと、それらを相続人に対してどう受け継いで欲しいのかを決めておかなければ、理想の相続が成り立つことはありません。遺族を「争族」としないためにも、遺言書について知っておき対応できるように努めていきましょう!

あわせて読みたい