退職金には所得税がかかる?所得税の目安額と計算方法!

退職金に対する税金が発生すること、つまり納税が待っています。そのため、「退職金をもらったのはいいけどどのくらい支払うことになるのか」をあらかじめ知っておかないと、いざその時が来た時に慌てふためくことにもなりかねません。それにも関わらず、実際どのような形で決められているのかを知らない人も多い気がします。
そこで今回は、退職金にかかる税金のうち所得税に関することを少しだけ紹介します。

退職金の本当の意味


現代、日本において、多くの日本人は相当な苦労をしながら労働に汗水を垂らしています。そして、その対価として給与を支給されて、毎月の納税や経費、そして欲しいモノなどを手に入れるなどして生計を立てている構造が一般的です。時折、労働を手放して自由に過ごしたい願望を持つ人も多いかもしれません。しかし、それでも日々頑張れるのは、生活を守るためだけではなくその労働の果てにある楽しみがあるからでしょう。その中の一つに、「退職金」があります。これは文字通り会社などを退職した労働者に対して支払われるお金です。

その退職の仕方も、自ら退職を申し立てる自己都合退職、会社の倒産など経営破たんによる会社都合退職、労働者が触法行為を行ったことによる懲戒など、いくつかのタイプに分かれます。しかし、もっともスタンダードと言えるのは、やはり「定年退職」でしょう。成果主義の導入、派遣や請負など非正規雇用者の定着などにより、年功序列制度や終身雇用制度が実質的に終焉したとされている現代においても、退職金について連想することと言えば、「退職金 = 定年」ではないでしょうか。だから、支給されたら大切に使っていきましょう。

退職金には所得税がかかる

まず、退職金を受け取るときは所得税がかかります。所得税とは、個人の所得に対して課せられる税金のことです。

所得税には10種類ほどの区分が存在していますが、退職金は、「退職所得」と呼ばれる区分に該当して計算されます。

退職金の所得税は、退職金の金額と勤続年数で変わる

「退職金にも所得税が発生する」とは前述の通りですが、退職金の金額と勤続年数によって変わります。この点は、住民税に対しても同様です。

勤続年数20年~35年の所得税

それでは、実際の所得税がどのように算出されるのか勤続年数20年~35年を想定して見ていきましょう。なお、文中に退職所得控除額と記載していますが、「退職金から差し引くことができる額」と認識してください。

勤続年数が20年の場合

勤続年数が20年の場合だと、800万円が退職所得控除額となります。よって、800万円以下の退職金であれば退職所得金額は0円となり納税が不要となります。

(1)退職金1,000万円:退職所得金額100万円、所得税51,050円

(2)退職金2,000万円:退職所得金額600万円、所得税788,723円

(3)退職金3,000万円:退職所得金額1,100万円、所得税2,137,974円

勤続年数が25年の場合

勤続年数が25年の場合だと、1,150万円が退職所得控除額となります。よって、1,150万円以下の退職金であれば退職所得金額は0円となり納税が不要となります。

(1)退職金2,000万円:退職所得金額425万円、所得税431,373円

(2)退職金3,000万円:退職所得金額925万円、所得税1,548,347円

勤続年数が30年の場合

勤続年数が30年の場合だと、1,500万円が退職所得控除額となります。よって、1,500万円以下の退職金であれば退職所得金額は0円となり納税が不要となります。

(1)退職金2,000万円:退職所得金額250万円、所得税155,703円

(2)退職金3,000万円:退職所得金額750万円、所得税1,111,869円

勤続年数が35年の場合

勤続年数が35年の場合だと、1,850万円が退職所得控除額となります。よって、1,850万円以下の退職金であれば退職所得金額は0円となり納税が不要となります。

(1)退職金2,000万円:退職所得金額75万円、所得税38,288円

(2)退職金3,000万円:退職所得金額575万円、所得税737,673円

実際に退職金にかかる所得税を計算しよう


さて、退職所得金額と所得税がいくらかかるかは分かりましたが、どうしてこの金額になるのか疑問に思う方も多いはずです。もちろん、しっかりと計算式があるのでそれを説明しながら算出されていく過程を見てみましょう。

①控除額を計算する

まず、退職所得控除額の計算をします。実はこれは前述の通り、勤続年数によって変わってきます。具体的には、それぞれ下記の専用の計算式によって算出されます。

(1)勤続年数が20年以下:控除額 = 40万円 × 勤続年数(80万円未満は80万円)

(2)勤続年数が20年超:控除額 = 800万円 + 70万円 × (勤続年数 – 20)

この計算式に前述の勤続年数35年を当てはめてみましょう。なお、勤続年数が35.5年(35年6か月)であれば、「36年」と小数点以下の数字を切り上げとなります。

800万円 + 70万円 × (35 – 20)= 1,850万円

これが退職所得控除額となります。さらに退職した理由が、「障害者になったこと」であればこれにさらに100万円加算されます。

②退職所得金額を計算する(①を利用)

退職所得控除額を算出したら下記の計算式に当てはめてみて退職所得金額を算出しましょう。

(退職金(源泉徴収前の金額) – 退職所得控除額) × 1/2 = 退職所得金額

例えば、退職金3,000万円、退職所得控除額1,850万円であれば下記の通りとなります。

(3,000万円 – 1,850万円) × 1/2 = 575万円

これが所得税の課税対象となります。

③下記表より(A × B – C) × 102.1% = 求める税額となる

算出した退職所得金額575万円に対して下図の速算表と計算式を参照して所得税を算出しましょう。
※標題の計算式だと記号で表記されているので、多少見づらいかと思いますので、下記の通り分かりやすく表記を直しています。

(退職所得金額 × 税率 – 控除額)× 102.1% = 求める税額
※102.1%のうちの2.1%は、平成23年3月11日に発生した東日本大震災の発生によって創設された、「復興特別所得税」と呼ばれる税金を指します。これは、平成49年12月31日まではこの税金がかかります。

(575万円 × 20% – 427,500円) × 102.1% = 737,673円

これが退職金に対する所得税の金額となります。

ここまでの流れでお分かりいただけたかと思いますが、退職所得金額とそこから算出される所得税は、「退職金と勤続年数が分かっていれば専門の計算式に当てはめて誰でも求められる」ということです。だから、今回の事例以外の退職所得金額と所得税もこの流れに沿って算出してみて下さい。ただし、復興特別所得税などは平成49年まで2.1%で定まっていますが、社会情勢などに左右されて変動する可能性は決して否定できません。そのため、国税庁などのホームページから税率を随時確認することをおすすめします。

役員の退職金は?


さて、今まで紹介したのは労働者としての退職金のことでしたが、ここでは逆に経営陣(つまり社長や役員)側の退職金についても少し紹介しましょう。

役員の退職金に決まりはなく自由

実は、役員の退職金には決まりはありません。自由に決められます。しかし、だからと言ってあまりに大きい金額に設定すると損金算入の対象とならないばかりか、「もらいすぎ」と社内外からの批判の対象にもなる恐れがあります。また、会社に損害を与えたと見なされる場合もあります。実際、それらのリスクをはらんだために税務署から否認や是正が起きたケースもあります。

そのため、退職金を決めるのに下記のポイントは考慮されているようです。把握だけでもしておくことに越したことはありません。

(1)定款
前述の通り、法的には役員の退職金に関する制限は特に定められていませんが、大体の会社では定款を設けているのが普通です。税務署や社内外で万が一のことがあった時を想定して作っておくに越したことはありません。

(2)損金算入
損金算入できる金額を求める方法としては、「功績倍率法」が適用されることが多いです。この範囲内で損金算入できる額を決めていると言われています。

(3)在任年数との関係
当然、在任年数が長いほど会社への貢献は上がっていくので退職金の決定にも影響します。

(4)役員の退職金に関するデータ
よく使われているのが、「総務省の人事・恩給委託調査(民間企業における役員退職慰労金制度 の実態に関する調査)」です。これによれば、役員の退職金を導入している会社は全体の半数になります。ただし、会社の規模が小さいほど導入を見送っていることも分かっています。

(5)その他
もちろん、上記以外にポイントとなることはありますのでぜひ確認して下さい。この制度も調べてみると複雑ですが、知っておくことで役員に対する認識が変わるかもしれません。

ただし株主総会での決議が必要

色々な要素によって決められる役員の退職金。ただし、法的な定めがないものの支給額が決定したからと言ってすぐに決定されるわけではありません。実は、決定した案に対して株主総会での決議も必要となります。これで、もし否決された場合は退職金がなしとなってしまう場合もあります。理由としては、「在職中の会社の功績に対する対価」の意味を持ち報酬とみなされることが挙げられます。また、株主からの質疑応答を経て退職金の金額に問題がないかと監視の意味もあったりします。このため、役員の退職金は、「その会社の性質を表している要素の一つ」と言っても過言ではないかもしれません。

まとめ

退職金は、年金と共に老後の貯えでありセカンドライフを送るための原動力になるものです。その退職金について基本的なことだけでも知っておけば、納税はもちろんのこと、ご自身の子供たちへ対する資金提供(住宅資金やお孫さんへの教育資金等)を想定した動きにも対応しやすくなります。また、補足的に役員の退職金についても触れましたが、役職についていない会社員との違いも理解をすることで退職金に対する考えも向上できることでしょう。

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