負担付贈与とは?贈与税の計算方法を紹介!

贈与と言えば、無償で自分の財産を譲渡する行為で相続と共によく生活設計をする上で題材となりやすいものです。しかし、これも勉強していくと税金の存在、あとは生前贈与といった文字通り生きているうちに行う贈与などの仕組みがあって複雑です。今回取り上げる負担付贈与もまたその仕組みのうちの一つです。簡単ではないですが、知っておくことで物を差し上げる行為に対する考え自体にも影響するかもしれません。

負担付贈与とは?


まず、序文でも述べた贈与について改めて説明すると「財産を無料で提供すること」です。この際、財産を譲渡する側を「贈与者」、財産を受け取る側を「受贈者」と呼んでいます。ただし、負担付贈与とはこの贈与の仕組みを基本としつつも「一定の負担を要求することを条件に贈与することおよびその財産」としています。つまり「無料ではなく有料による財産の提供」という点が大きく異なります。なお、この一定の負担を「債務」といいますが、これは金銭または物を給付することを義務づけられています。

よって、負担付贈与を分かりやすく言い換えると「金銭を支払うことを条件にした財産の受け渡し」となります。もちろん前述の通り、物でも贈与として成り立ちますが実情としては金銭が多いです。

事例を紹介すると「5,000万円を贈与する代わりに借入金として300万円を負担すること」といった場合は、まさに負担付贈与となります。なお、より詳しいことは後述にて紹介します。

ところで、ここで一つ注意して欲しいのが「負担付贈与は民法上の双務契約とみなされる」ということです。贈与は前述の通りの定義がある以上、本来なら贈与者だけがその行為に対する責任を負います。しかし、これが負担付贈与となると、贈与者と受贈者がそれぞれ責任を負うことになります。この契約形式を双務契約といいます。

このため、受贈者が義務を怠れば贈与者は贈与することを辞めることができます。前述の事例で当てはめると「5,000万円を贈与したいけど300万円は負担したくない」と受贈者が拒否反応を起こせば負担付贈与にはならないということです。

贈与の性質上、本来ならこういった関係になるのは違和感があることですが、負担を強いるとなれば金銭の動きが前提となります。そのため、通常の片側だけの責任だけではトラブルを招く恐れもあるため双務契約になります。

負担付贈与が行われる場合の例

負担付贈与が具体的にはどういった場面で行われるかを紹介します。

ローンの負担

ローンの負担に関しては、比較的負担付贈与が起こりやすい事例です。

例えば次の事例の場合などです。

①Aさんは3,000万円で購入したマンションを何らかの事情で贈与することにした
②しかし、マンションを購入したローンが全額完済できていなかった
③1,000万円であるが、手元にそのお金はすぐに用意できない
④そこで受贈者である知り合いのBさんに対して「このマンションを差し上げるから残りの1,000万円を払って欲しい」と贈与者から提案をした

この場合は、贈与者にとっては残りのローンを完済できること、受贈者にとってはある程度の経過年数は考慮しなければならないものの3,000万のマンションを1,000万円で購入できると、お互いの利害が一致することができます。しかし、安くても年数が過ぎていることに気にかけて断った場合、負担付贈与は不成立となります。

介護の負担


介護もまた負担付贈与が起こりやすい事例です。

例えば次の事例の場合などです。

①Aさんは、数年前の交通事故で障害を抱えて介護状態となっている
②しかし、現状の介護体制だけでは安心して生活を送ることができない
③そこで1年で100万円ずつの贈与をする代わりに、介護の仕事の経験がある知り合いのBさんに、週3日程度でもいいので介護をしてもらうことにした

この場合は、贈与者にとっては不足している介護の状況を改善できること、受贈者にとってはある程度の収入ができると、お互いの利益が一致することができます。しかし、ときおりとは言え介護の仕事が大変だからと断った場合、負担付贈与は不成立となります。

負担付贈与の贈与税に関して

個人で負担付贈与があった場合、一定の金銭の流れがあるため贈与税として税金の対象となります。

なお、その際は次の決まりがあるので注意してください。

①贈与された財産が不動産(土地や建物)の場合は、購入したときでなく贈与するときで判断する
②贈与時の価額から負担額を控除した価額によることになっている
③贈与された財産が①~②以外の場合は、その財産の相続税評価額から負担額を差し引いた価額となる

これらに加えて、負担付贈与があった場合においてその負担額が第三者の利益に帰すときは、第三者は負担額に相当する金額を贈与により取得したことになるといった決まりもあります。

負担付贈与がある贈与税について実際に計算してみよう


前述の決まりを基にした負担付贈与がある贈与税の計算を紹介します。

(1)贈与税の計算

例えば次の事例の場合で計算します。

☑ 贈与財産:5,000万円
☑ 負担付贈与額:4,000万円
☑ 贈与者:20歳以上の子

この数字を次の式に当てはめます。

贈与税 = (1年間にもらった財産 - 負担付贈与額 - 基礎控除110万円)×贈与税率 - 控除額

当てはめると次の通りです。

(5,000万円 - 4,000万円 - 110万円)× 30% - 90万円=177万円

これが贈与税となります。

なお、式の内容を少し解説します。

☑ 1年間にもらった財産:実際に贈与する財産
☑ 負担付贈与額:受贈者が負担する金額
☑ 基礎控除110万円:贈与税の計算をする際の基本となる控除
☑ 贈与税率と控除額:贈与税の課税価額に対する所定の税率と控除額

基礎控除は、一律110万円と定まっています。これは、負担付贈与でない通常の贈与でも控除するため覚えておくと便利です。1年間で発生した贈与する財産から負担する贈与額に加えてこの控除を差し引くことができます。

(2)贈与税の税率と控除額

なお、平成27年1月1日から、贈与額から基礎控除110万円を差し引いた額に対する税率と控除額が、贈与者と受贈者の関係によって次の通りパターン分けされます。

パターン1:一般の贈与場合
☑ 200万円以下の場合:税率=10%、控除額=なし
☑ 300万円以下の場合:税率=15%、控除額=10万円
☑ 400万円以下の場合:税率=20%、控除額=25万円
☑ 600万円以下の場合:税率=30%、控除額=65万円
☑ 1,000万円以下の場合:税率=40%、控除額=125万円
☑ 1,500万円以下の場合:税率=45%、控除額=175万円
☑ 3,000万円以下の場合:税率=50%、控除額=250万円
☑ 3,000万円超の場合:税率=55%、控除額=400万円

パターン2:特例の贈与の場合(親または祖父母から20才以上の子へ贈与する)
☑ 200万円以下の場合:税率=10%、控除額=なし
☑ 400万円以下の場合:税率=15%、控除額=10万円
☑ 600万円以下の場合:税率=20%、控除額=30万円
☑ 1,000万円以下の場合:税率=30%、控除額=90万円
☑ 1,500万円以下の場合:税率=40%、控除額=190万円
☑ 3,000万円以下の場合:税率=45%、控除額=265万円
☑ 4,500万円以下の場合:税率=50%、控除額=415万円
☑ 4,500万円超の場合:税率=55%、控除額=640万円

特例の贈与の方が、贈与額から基礎控除110万円を差し引いた額と控除額の範囲の幅が大きいことが分かります。

(3)贈与税の申告の実情

ただし、この贈与税のルールは実情ではあまりしっかりとしていないことが多いです。

例えば次の事例の場合などです。

①親Aが子Bに自動車を買い与える資金150万円の贈与することになった
②この場合、贈与税は4万円(150万円 - 基礎控除110万円) × 4% = 4万円)となる
③しかし、本来なら子Bが②で求めた贈与税を税務署に申告しなければならないにも関わらず行われていないことが多い

当然、これが脱税と判断される可能性がありますが、税務署の把握能力の限界もあって実際摘発が難しいことがあります。そのため、ひそかに行われることが多い事例となっています。

もちろん、これを繰り返すのも税務署に把握された場合はまとめて支払うことになり、リスクの面からあまり多用するのも禁物です。また税務署は、キャッシュフローや、不動産の名義の書き換えなどは把握しています。調査の度合いによりますが、調べようと思えばいつでも調べる事ができます。だから、原則としてきっちり手続きを取ることをおすすめします。

(4)一般贈与財産と特例贈与財産、両方起きた場合の計算

他にも「特例と一般、両方の贈与が起きた」という場合も想定できます。

実際のところ次の事例のように起こりやすいものです。

①20歳以上の子が、配偶者から贈与を受けることになった
②しかし同時期に自分の両親からも贈与を受けることになった

この場合は、少し面倒ですが①を一般贈与、②を特例贈与とみなして次のような計算をすることになります。

①全ての財産を「一般税率」で計算した税額に占める「一般贈与財産」の割合に応じた税額を計算する
②全ての財産を「特例税率」で計算した税額に占める「特例贈与財産」の割合に応じた税額を計算します。
③①と②を合算する

具体的な事例で計算しましょう。

☑ 一般贈与財産:500万円
☑ 特例贈与財産:1,000万円

①合計価額1,500万円を「一般贈与財産」として計算する
1,500万円 - 110万円 = 1,390万円
1,390万円 × 45% - 175万円 = 450.5万円

この税額に一般贈与財産を乗じて、さらに一般贈与財産と特例贈与財産を合算した金額をもって除して求めます。

450.5万円 × 500万円 / (500万円 + 1,000万円) = 150.1万円

②合計価額1,500万円を「特例贈与財産」として計算する
1,500万円 - 110万円 = 1,390万円
1,390万円 × 40% - 190万円 = 366万円

この税額に特例贈与財産を乗じて、さらに一般贈与財産と特例贈与財産を合算した金額をもって除して求めます。

366万円 × 1,000万円 / (500万円 + 1,000万円)= 244万円

そして、一般贈与財産と特例贈与財産の税額を合算して最終的な贈与額を求めます。

150.1万円 + 244万円 = 394.1万円

なお、贈与税の課税価格の端数処理については「1,000円未満の端数金額またはその全額が1,000円未満であるときはその全額を切り捨てる」となっていることに準拠しています。ただし、これは暦年課税という方式によるものです。贈与税には相続時精算課税という制度もあり、こちらはまた異なる端数処理のため注意してください。

まとめ

負担付贈与の基本と事例、計算などを紹介しました。双務契約であるため贈与者と受贈者それぞれに責任が生じることなど注意しなければならない点もあるものの、上手く対応をすれば通常よりも安価で入手することが出来る可能性もあり、相続と密接に関係することもあって日頃から関心を持っておくことが大切です。

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