退職金には所得税と住民税がかかる!それぞれの算出方法は?

退職金とは、企業に勤務していた人が退職した時に支給されるお金を言います。勤続年数が長く仕事の能力が高い程高額になっていくのが一般的で、一度に大きな金額を手にしますので、老後資金にしたり長年に亘ってやりたかったことをスタートさせたりと、どのように使おうか計画するのが楽しくもありますよね。そんな退職金にも、所得税と住民税が掛かることはご存知でしょうか?今回は、退職金に対する所得税と住民税それぞれの算出方法を紹介します。

退職金には所得税と住民税がかかる


一般的に、サラリーマンが受け取る給与、不動産を賃貸している方の家賃収入、個人で仕事をしているフリーランスに支払われる事業所得などは、所得税と住民税が掛かってきます。前年の所得に応じて税金が掛かる所得税や住民税は「前年課税」が原則となっており、所得税に関しては、勤務先から給与を支給されているサラリーマンの場合、給与から源泉徴収されていますので改めて支払う必要はありませんが、フリーランスや他に所得がある方の場合は、確定申告をする必要があります。

退職金の場合も所得税と復興特別所得税、住民税が掛かります。所得税の場合は勤務先に「退職所得の受給に関する申告書」を提出しておくと、源泉徴収で徴収されますので基本的に確定申告をする必要が無くなります。しかし、この申告書を提出していない場合は、退職金の収入金額に対して一律で20%の所得税が掛かってしまいますので、忘れずに提出しておくことが重要です。

万が一申告を忘れてしまった場合でも、退職金を受け取った本人が確定申告をすることで退職金の所得税額は精算が可能となっていますので心配は要りませんが、手間が掛かかってしまいますので、退職手続きをスムーズにするためにもしっかりと提出しておきましょう。

退職金に掛かる税金は、支払いを受ける時に所得税、復興特別所得税、住民税などの税金が源泉徴収や特別徴収によって支払いが終了します。また、退職金は一時所得であるため、他の所得とは区別され、退職所得控除といった勤続年数に応じた控除枠が設けられており、税金の負担を軽くする配慮がなされています。退職金の他に不動産所得などの所得がある場合は、控除額や種類に違いがあり、そのような時は確定申告をした方が有利となる場合がありますので、専門家とよく相談してみると良いでしょう。退職金を受け取る被相続人が死亡しており、死亡した後3年以内に退職金を相続人が受け取った場合には相続税が課税されることになりますので、所得税や復興特別所得税、住民税は課税対象とならないことになっています。

退職金の所得税の計算方法


退職金は、老後の生活のためにあてる老後資金として用いられる場合が少なくありませんので、一般的な所得税と同じ様に課税された場合には負担が大きくなってしまいます。そのため、退職金は他の所得とは分けて税金の計算がされることになっており、受けられる控除の種類や金額も異なっているのが現状です。計算のポイントとしては、退職所得控除額での控除が可能、退職所得の金額算出時には源泉徴収される前の金額から退職所得控除額を引いた額の2分の1の金額になる、他の所得と合算せず計算する分離課税になっているなどが挙げられ、退職金に対する所得税は他の所得と比べてもかなり優遇されています。

具体的な退職金に対する所得税の計算方法は以下のようになっています。

(退職所得金額×所得税率-控除額)×102.1%
退職所得金額の計算方法
(退職金(源泉徴収される前の金額)-退職所得控除額)×1/2

①退職所得控除額を計算する

退職金の所得税を計算する時には、まず退職所得控除額を計算することから始まります。退職所得控除とは、退職金を受取った時に課税対象となる退職所得の金額を算出する場合に控除される金額のことを指し、勤続年数によって控除額が変わってくることがポイントです。

勤続年数が20年以下の場合:控除額=40万円×勤続年数(80万円に満たない場合は80万円)勤続年数が20年超の場合:控除額=800万円+70万円×(勤続年数-20)と計算方法が定められており、勤続年数が1年に満たない部分は切り上げて計算します。また、障害者となったことが直接の原因で退職した場合は、この計算方法で算出された金額に100万円が加算されることになりますので、自分でシミュレーションしてみる場合は注意しましょう。具体的な例は以下のようになっています。

勤続年数が30年の場合の控除額 = 800万円+70万円×(30-20) = 1,500万円

勤続年数が30年ですので、40万円×20年、残りの10年は1年につき70万円が控除となることによって800万円+700万円=1500万円が退職所得控除ということになります。

②退職所得金額を計算する(①を利用)

次に、退職所得金額を計算します。

退職所得とは、退職手当を始め一時的な恩給など退職することによって一時的に受ける給与などを指します。具体的には、国民年金法や厚生年金保険法などの規定に基づいて支給される一時金、地方公務員等共済組合法の規定に基づく一時金、確定拠出年金法に規定する企業型年金規約に基づいて支払われる老齢給付金など多数の一時金が挙げられ、労働基準法の規定によって使用者から使用人に支払われる解雇予告手当なども含まれることに加えて、使用人から役員になった場合などに受け取る退職金も退職所得と同性質のものとなります。

ただし、引き続き勤務している人に支払われる賞与と同質であるとみなされたものは、退職所得とならないとされています。このように退職所得となるものは多種多様に挙げられ、勤務する業種によって規定がある場合もありますので確認しておくことが大切です。退職所得の計算方法は、(退職金(源泉徴収される前の金額) – 退職所得控除額) × 1/2 = 退職所得金額とされており、源泉徴収される前の金額から退職所得控除額を引いた金額の2分の1で算出します。

具体的な例は以下のようになっています。

上記の人が退職金を2,000万円もらった場合
退職所得金額 = (2,000万円 - 1,500万円)×1/2 = 250万円

上記の計算方法で算出した250万円が、退職金の所得税を計算する上での課税金額となります。

③退職金の所得税を求める

最後に退職金の所得税を計算します。上記で算出した課税退職所得の金額を基に該当する金額の税率を当てはめていきます。算出された課税退職所得金額に税率を掛け、控除額を差し引き102.1%を掛けて算出します。

税率は下記のようになっており、下記表より(A×B-C)×102.1%=求める所得税額となります。

A課税退職所得金額         B税率     C控除額
1,000円から1,949,000円まで      5%       0円
1,950,000円から3,299,000円まで    10%     97,500円
3,300,000円から6,949,000円まで    20%    427,500円
6,950,000円から8,999,000円まで    23%    636,000円
9,000,000円から17,999,000円まで   33%    1,536,000円
18,000,000円から39,999,000円まで   40%   2,796,000円
40,000,000円以上           45%    4,796,000円

退職所得金額は250万円ですので税率は10%、控除額は97,500円ということになり
(2,500,000円×10%-97,500円)×102.1%=155,700円が所得税

従ってこの計算によって算出された155,700円が所得税ということになります。102.1%を掛けるのは、所得税とは別に復興特別所得税という税金も課されることになっており、所得税額に2.1%を掛けたものがその税額となるためです。退職金は同年に2ヶ所以上から支払われる場合もありますが、その場合には退職金又は退職金と見なされる退職一時金として支払われた総額が退職金として計算されることになり、所得税の課税対象となります。

 

退職金の住民税の計算方法

次に、退職金の住民税の計算方法について説明します。退職金に対して課税される住民税は、退職所得金額に10%を掛けて算出し、税額が100円未満の端数が出た場合は切り捨てになります。

上記の例で計算しますと、退職所得金額は250万円ですので以下のようになります。

250万円×10%=25万円が住民税金額

実際に退職金の所得税や住民税を計算してみますと、意外に簡単という印象があったのではないでしょうか?退職金の税金は所得税及び住民税共に他の所得とは区別して課税される分離課税で計算され、退職金の支払者が税額を計算して退職者が退職金を受取った年の1月1日現在での居住地の市町村に申告及び納付することになっています。退職金にも様々な種類がありますので、退職所得として分離課税の対象とならなかったものについては、翌年の総所得金額に合算されて課税されることになります。

退職金の相場は?


退職後や定年後の人生において経済的に大きなウエイトを占める退職金ですが、そもそも退職金は、企業に勤務している人なら誰でももらえるものなのでしょうか?実際には誰でももらえるわけではなく、もらえないという人も少なくありません。退職金は、雇用者にとっては法律で決められている義務となっているわけではありませんので、民間企業の場合は支払わなくても何も問題は無いということになります。ただし、規定を設ける場合は、受け取ることができる労働者の範囲や計算方法の詳細、支払時期といった項目を就業規則に明記することが法律で決められています。

退職金の支払いがある企業では、退職一時金という名目で支払われる場合もあり、勤務していた企業などから退職することによって一時的に支払われるお金を指しています。このことから、退職時にまとめて受取るお金が退職一時金ということになります。まとめて支払われる一時金に対して、退職年金として退職時に支払われる年金もあり決まった額が継続して支払われるものを指します。その中には、日本版401Kと呼ばれている確定拠出年金(企業型)や中小企業退職金共済、確定給付年金(規約型)名とがあり、企業によって様々な制度が取り入れられています。企業によっては退職一時金と退職年金の両方を取り入れている所も少なくなく、それによって退職金の金額に違いがあります。退職金は、企業の就業規則に支給が定められており、支給規定を満たしていた場合に退職することで受け取れるお金で、公務員や企業の規模が大きい程高額になるのが一般的です。中小企業でも高額となっている場合も少なくありませので、企業の規模で一概に金額を比べることはできませんが、他の人はどれぐらいの退職金を受け取っているのかに関して気になるという方も少なくないのではないでしょうか?ここで少し退職金の相場を見てみましょう。

2016年の東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情調査」によって退職金の相場を見てみますと、卒業後すぐに入社して、普通の能力と成績で勤務した場合の退職金水準でのモデル退職金は、高校卒で10,829千円、高専・短大卒で10,305千円、大学卒で11,389千円が定年時の退職金となっています。

また、モデル退職金の支給額をモデル所定時間内賃金で割った支給月数をみてみますと、定年時に支給される額の月数は、高校卒が27.3月、高専・短大卒、25.0月大学卒で25.4月となっています。高専・短大卒よりも高校卒が支給される額が多くなっているという結果になっており、支給月数に関しては、大学卒を抜いて高校卒が最も多くなっています。その理由としては、卒業後すぐに入社という点にあり、勤続年数を見た場合には高校卒が最も勤続年数が長くなりますので、高専・短大卒よりも退職金の額も多くなることが考えられます。退職理由によっても違いがあり、自己都合退職の場合は定年などの会社都合退職に比べて退職金の支払い額が低くなる傾向にあります。また、高校卒と大学卒の退職金の支払い額を比べた場合560千円程の差が見られ、高校卒に比べて大学卒業者の方が高くなっています。

一方、退職金が退職一時金のみのモデルケースでは、最新の調査においては高校卒で10,416千円、高専・短大卒で9,658千円、大学卒で10,164千円となっており、全体的に平成26年度の調査よりも減少しているのが分かります。特に、大学卒ではその金額が大きくなっており、平成26年度と比べて2,600千円程減少しています。また、退職一時金のみの企業の場合は、平成26年度の調査から見ると高校卒と大学卒を比べてもさほど差が見られないようになってきており、社会背景や企業の内情などが大きく関係しているともいえそうです。

次に、退職一時金と退職年金の両方を併用している企業のケースで、今回調査した支給金額を見てみますと、高校卒で12,180千円、高専・短大卒で12,353千円、大学卒で13,966千円となっており、やはり平成26年度調査時に比べて大学卒で1,500千円程が減額となっていることを始めとして全体的に減っていることが分かります。しかし、退職一時金と退職年金を併用している企業の場合は、一時金に年金がプラスされているという理由からか、一時金のみという企業よりも金額が高くなる傾向にあり、年金制度がある企業の場合は、年金の恩恵が受けられるというメリットがあります。

退職金の相場を見てみますと、退職給付金などの制度が充実している企業ほど高額となる傾向があり、学歴によってもかなりの差があるのが見受けられます。また、ここには詳細がありませんが、大学卒業者でも業種や職種によって退職金に差が見られるのが現状です。
退職金の額だけを見てみますと、退職一時金と退職年金を併用している形態の企業が最も高額となっていますので、このことからも学歴や企業の規模だけではなく、退職金制度の違いによっても大きく異なることが分かります。

公務員の場合は、どうなっているのでしょうか?公務員の退職金については、法律を始め各都道府県や市町村の条例によって定められています。
公務員の退職金は退職手当として支給されることが多く、非常勤職員以外は支給されることになっています。退職手当は、退職日の俸給月額や退職理由別及び勤続年数別支給額、調整額などによって決められ、国家公務員の場合は、定年前早期退職特例措置や俸給月額が減額されたことがある場合の特例などの特例が設けられています。また、上記で述べたように民間企業でも設けられている早期退職優遇制度も設けられており、早期退職のメリットである退職金の割増しも受けられるようになっています。相場に関しては、公務員も退職理由や職種によっても違いがあり、概ねの相場はあるものの、各民間企業が独自に定められる規定と違う細かな算出方法があますので、相場を見るのは難しいと言えそうです。税金面では、公務員の場合も退職金には所得税や住民税がもちろん課税され、適切に支払わなくてはならないようになっています。

このように、退職金の有無や支払い方法及び金額などは、公務員及び各企業によって様々ですので、退職時に慌てないように就業規則をよく確認してみましょう。

東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情調査」(2016年)

まとめ

いかがでしたか?退職金は、毎月支給される給与と同じで、所得税と住民税が課せられますが、税金面では税率が通常よりも低くなっており優遇されています。また、退職金には様々なのもがあり、退職金として見なされないものもありますので、どんなものが退職金として扱われるのか知識を深めておくことが大切です。

退職金を受け取る際には「退職所得の受給に関する申告書」を提出することも忘れないようにしましょう。

あわせて読みたい