確定拠出年金(個人型)についての基礎知識。老後豊かな生活をおくるために!

年金制度は、社会保険労務士など年金と労務のプロでも全てのことを理解しきれているのか疑問なほど複雑な構造の制度ですが、それだけ日々の生活の保障に加えて資産運用や設計などにも大きな影響を与える存在です。そのため、しっかりと理解することが必要です。ところで、この国の定めている公的年金以外にも確定拠出型年金と呼ばれる年金制度を利用している方も多いと思います。今回は、その確定拠出年金の基本を年金の基本的な仕組みと共に紹介します。

確定拠出年金とは?


確定拠出年金を一言でまとめると「企業年金」に該当するものです。

日本の誇る従来の年金制度と言えば、公的年金や企業年金などがありますがこれは「確定給付年金」と呼ばれていて、国や企業が将来受給する年金額を保証しています。

しかし、景気が低迷しつつある現代社会においては、それだけで老後の生活がまっとうに送れるかと言った不安の声も大きくなっています。

そのため、新たな資産形成の選択肢として、2001年10月から導入された制度が「確定拠出年金」となります。このため、本制度は従来の公的年金ではなく「私的年金」として扱われています。しかし、本制度発足から16年が経過した結果、「日本版401k(アメリカで採用されている税法上の特典がある確定拠出個人年金制度)」とも呼ばれるほど一般的に定着しています。

確定拠出年金の基礎知識

確定拠出年金の基本的な仕組みを紹介します。

確定給付年金との違いは?


まず、確定給付年金との違いですが、これは前述の通り「公的年金や企業年金など従来の年金制度」を意味します。そのため、受給対象者に支払う年金は国や企業が保証する役割を負っています。これに対して、確定拠出年金とは、「加入者自身が自己責任のもとに資産運用を行う制度」を意味します。この結果、会社が不足分を補うリスク不要となる特徴があります。

この点が2つの年金制度の決定的な違いとなります。そもそも、確定拠出年金が発足した背景には次のことが挙げられます。

・少子高齢化、高齢期の生活の多様化など社会経済情勢の変化を考慮していること
・個人又は事業主が拠出した資金を個人が自己の責任において運用の指図を行うこと
・高齢期においてその結果に基づいた給付を受けることができるようにすること
・国民の高齢期における所得の確保に係る自主的な努力を支援すること
・公的年金の給付と相まって国民の生活の安定と福祉の向上に寄与すること

なお、日本の年金制度は下記の通り3階層に分けられていますが、確定拠出年金はこのうちの第3階層に位置付けられています。

・第1階層:国民年金
・第2階層:厚生年金保険
・第3階層:厚生年金保険にさらに上乗せの年金制度(確定拠出年金、厚生年金基金、確定給付企業年金など)

この点から、年金制度の存在が「真剣に向き合ってみることで老後の生活がより安泰するようになっている制度」と言うことが伺えられます。

企業型と個人型がある

この確定拠出年金には大きく分けて、個人型と企業型の2種類から成り立っていますが、それぞれの制度の特徴は下記の通りです。

・企業型
加入目的:会社が退職金制度の一環として導入している
掛金:会社負担(ただし、規約を定めれば個人からでも拠出可能)
納付方法:会社が納付
金融機関:会社で選択
運用商品:あらかじめ会社が用意している商品から選択して加入
口座管理料:会社が負担するがまれに会社員が負担する場合もある

・個人型
加入目的:自身の判断で任意加入できるようになっている
掛金:自己負担(会社からの拠出不可)
納付方法:自身の口座から振替
金融機関:自身で選択
運用商品:あらかじめ自身で選択して加入
口座管理料:自身で負担

個人型の確定拠出年金の仕組み

確定拠出年金には会社型と個人型がありますが、このうち個人型の仕組みを紹介します。

まず、基本となる規約は国民年金基金連合会が制定を行っており、前述の通り「本人の判断によって任意加入ができる」ことが挙げられます。また、各金融機関で任意加入して、「掛金を個人で拠出して運用する」と言った特徴があります。

この点は、会社型の特徴である「あらかじめ商品の選択肢が狭められているものの従業員自身が納付は不要」である点と異なります。

それぞれの加入目的が異なることから、このような違いが出ていることが伺えられます。

個人型確定拠出年金に必要な手数料


個人型確定拠出年金に必要になってくる手数料は下記の通りです。

・加入手数料
加入時にかかる手数料のことで初回のみ発生します。ほぼ全ての金融機関が2,777円(税込)で設定されており、最終的に国民年金基金連合会に支払うことになります。ただし、金融機関によっては異なる場合があります。例えば、さわかみ投信やSBIベネフィット・システムズでは3,857円となっています。

・口座管理手数料
金融機関に対する手数料のことで、機関によってそれぞれ下記の通りの金額となります。

国民年金基金連合会:月額103円(年額1,236円(税込))
信託銀行:月額64円(年額768円(税込))
運営管理機関:金融機関によって異なる

なお、国民年金基金連合会は「事務手数料」、信託銀行と運営管理機関は「資産管理手数料」という名目になっています。また、金融機関によっては無料となる場合があります。例えば、楽天証券などは残高、積立額、期間に関係なく条件なしで誰でも無料としています。

・移管時手数料
他の金融機関、または企業型確定拠出年金に移換する際にかかる手数料のことです。現時点で下記の機関で発生しています。

楽天証券:4,320円
SBI証券:4,320円
大和証券:4,320円
スルガ銀行(資産50万円未満):4,320円
スルガ銀行(資産50万円以上):4,320円
さわかみ投信:4,320円
SBIベネフィット・システムズ:4,320円

・年金受取手数料
個人型確定拠出年金を受け取る際にかかる手数料のことです。これは全ての金融機関において432円(税込)となっています。なお、老齢給付金と障害給付金の場合は、受取方法を一時金と年金から選ぶことができ、年金の場合は年何回・何年間の受け取りをするかを任意で指定することもできます。よって、年金受け取りの場合は、年金受取手数料もよく考えましょう。

・還付手数料
還付が行われた際にかかる手数料のことです。国民年金基金連合会だと1,029円、事務委託先金融機関が行う場合は432円となります。なお、支払方法は、還付金から自動的に控除されます。ただし、企業型から個人型など移換がされていた場合、そのタイミングにズレが生じて二重の掛金拠出がされること、国民年金保険料の納付漏れに気づかずに拠出されるといった事態も想定できますので十分注意してください。

・信託報酬
商品を運用する際に発生する手数料で金融機関ごとに異なります。そのため、下記の点に注意しましょう。

商品によって料率が異なる
運用期間が長くなるまたは資産残高が多いほど、信託報酬の差が広がる

よく比較をしてベストと判断した金融機関を選択する必要があります。

確定拠出年金のメリット

確定拠出年金のメリットは次の通りです。

運用がうまくいけば年金資金を大きく増やせる

確定拠出年金は年金であると同時に数ある金融機関の商品を選択することができるなど資産運用の一面もあるため、資産を増やすことも可能になります。

掛金全額が所得控除の対象

なんと言っても掛金が全額所得控除というのは大きいです。加入者の立場上、掛金は異なりますが、これが全額控除というのは本制度の大きなメリットといえます。

具体的な掛金及び控除については後述に記載します。

運用で増やした額も全額非課税

確定拠出年金の場合は運用益が非課税となるため、運用で得られた利益や配当金、売却益等がそのまま受け取ることができます。次の運用資金に回すのも貯蓄とするのも可能です。

確定拠出年金のデメリット

良いこと尽くしの確定拠出年金ですが、やはりデメリットも存在します。

60歳までは原則解約不可

NISA(少額投資非課税制度)などはいつでも払出しや売却が可能ですが、iDeCoは原則として60歳まで引き出すことができません。これは、「私的年金とは言っても知名度と普及具合から、実質的に公的年金の上乗せという状況も加味してあくまで年金である」という制度のスタンスがあるからです。ただし、必然的に長期間の運用となるため期間中は非課税の優遇を受けることができる点は見逃せないと言えます。また、加入期間が短い場合や資産残高が極めて少ない場合で、障害が生じた場合などには、脱退一時金を受給することができます。

一定の手数料が必要

残念ながら確定拠出年金を運用する際は全てが無料ではありません。前述の通り個人型確定拠出年金などでは一定の手数料がかかります。ただ、運用益は非課税、掛け金は全額所得控除などの特典はそれでも大きいものと言えます。

転職・退職時に年金資産を移管できず損する可能性も

確定拠出年金に加入していても、下記の点に注意しなければ損をする可能性があります。

・確定拠出年金(企業型)がなくて企業年金がある企業や公務員に転職した
・第3号被保険者になった

この場合は、確定拠出年金の残高を企業年金に移せなくなるため新たな拠出も難しくなります。その結果、「運用指図者」だけの立場となり、すでに拠出した年金残高部分のみ運用できなくなります。それでもその状況に関係なく、手数料は毎月発生します。

もっとも、これは2017年以降の制度改正によって大きく改正されました。現在は、下記の場合のみ資産の移管できないことになっています。

・確定拠出年金(個人型):中小企業退職金共済
・中小企業退職金共済:個人型確定拠出年金
・中小企業退職金共済:確定給付企業年金(中小企業の脱却や合併など以外の場合)
・中小企業退職金共済:確定拠出年金(企業型)(合併など以外の場合)

ただし、企業型確定年金を実施している企業を退職し、転職先で企業型確定拠出年金が実施されていない場合、年金資産を6ヶ月以内に個人型年金に移管しなければ、特定運営管理機関という機関に自動的に移されてしまいます。この場合は、年金資産の金融商品による運用ができず利息もなくなる上、通算加入者等期間にも算定されなくなります。そうなる前に移管手続きを必ず行っておきましょう。

運用が失敗すれば給付額が支払額より少なくなることも

金融機関の商品を運用する以上、失敗して給付額が支払額よりも少なくなってしまうリスクも兼ね備えています。そもそも商品内容は、預金や投資信託、保険などだという点を忘れてはなりません。だから、誰にも相談せずに表面的な内容だけで運用するのは危険が伴います。よほどの知識と経験がない限りは専門家に相談するなども考えましょう。

iDeCo(イデコ)について

2017年1月から、個人型確定拠出年金制度が変更されて「iDeCo」の愛称で呼ばれて普及しています。この制度の主な特徴を紹介します。

iDeCo(イデコ)とは?

「個人型」の確定拠出年金のことですが、愛称となっている「iDeCo」は、確定拠出年金普及・推進協議会が2016年8月1日~21日の間に行った一般公募の中から選定されました。正式名称である「individual-type Defined Contribution pension plan」を略したもので、選定理由としては下記の通りです。

・個人型確定拠出年金をうまく表している
・「i」には「私」という意味があって自身で運用する年金という特徴を捉えている
・「イデコ」という響きが親しみやすい
・小文字と大文字の交互の組合せが、スタイリッシュでおしゃれな印象を与えている

iDeCo(イデコ)の掛金(積立)について

基本的に、積立した掛金は全額所得控除となり所得税や住民税の軽減に繋がります。

個人型の場合は下記の通りの掛金が控除されます。

・第1号被保険者
月額68,000円(年間816,000円)

・第2号被保険者
会社が企業型確定拠出年金を実施しておらず、他の企業年金を実施していない会社員:月額23,000円(年額276,000円)
会社が企業型確定拠出年金を実施しておらず、他の企業年金のみを実施している会社員:月額12,000円(年額144,000円)
会社が企業型確定拠出年金を実施しており、他の企業年金を実施していない会社員:月額20,000円(240,000円)
会社が企業型確定拠出年金を実施しており、他の企業年金も実施している会社員:月額12,000円(144,000円)
公務員:月額12,000円(144,000円)

・第3号被保険者
23,000円(年間276,000円)

金額は上限額のことを指しています。なお、他にも下記の特徴があります。

・月額最低5,000円以上1,000円単位で掛金は決められる
・この掛金拠出額は年1回の変更が可能である
・掛金拠出の休止や再開はいつでも申し込むことでできる
・納付方法としては、口座振替があるが、自営や無職の方の場合は本人名義の口座、会社員の場合は給与天引きまたは本人名義の口座、といった形での引落しとなる

iDeCo(イデコ)の運用について

すでに紹介済ですが確定拠出年金は、運用益は全額非課税となります。だから、ここで生み出した利益などは全額貯蓄または次の資産に充てることができます。通常、利益には税金が掛けられるものなのでこれは大きなメリットと言えます。

iDeCo(イデコ)の給付について

給付されるものは、老齢給付金、障害給付金、死亡一時金となりますが、最低でも10年以上の通算加入期間が必要になり60歳以上の受給開始となります。

なお、給付の仕方によって下記の所得控除が適用することができます。

・一時金として受給
「退職所得控除」が受けられます。その退職所得控除の計算式は下記の通りです。

20年以下の場合:40万円 × 勤続年数(80万円に満たない場合は80万円)
20年超の場合:800万円 + 70万円 × (勤続年数 - 20年)

たとえば、勤続年数が30年であれば1,500万円までは一時金は非課税となります。また、障害者になったことが直接の原因で退職した場合は、上記の方法により計算した額にさらに100万円が加わり1,600万円となります。

・年金として受給
「公的年金等控除」が受けられます。

まず、年齢によって区分分けされた収入を下記の計算式に当てはめていきます。

公的年金等に係る雑所得の金額=公的年金等の収入金額の合計額 × 割合 - 控除額

65歳未満
700,000円:所得金額なし
700,001円~1,299,999円:割合100%、控除額700,000円
1,300,000円~4,099,999円:割合75%、控除額375,000円
4,100,000円~7,699,999円:割合85%、控除額785,000円
7,700,000円以上:割合95%、控除額1,555,000円

65歳以上
1,200,000円:所得金額なし
1,200,001円~3,299,999円:割合100%、控除額1,200,000円
3,300,000円~4,099,999円:割合75%、控除額375,000円
4,100,000円~7,699,999円:割合85%、控除額785,000円
7,700,000円以上:割合95%、控除額1,555,000円

上記の計算式で算出された金額に、さらに基礎控除として38万円が加算された金額までは非課税となります。

例えば、60歳未満なら108万円、65歳以上であれば158万円までが非課税となります。

まとめ

確定拠出年金は、手数料などがかかること、60歳までは原則受け取りができないことなどのデメリットもありながらも、運用益は非課税、掛金は全額所得控除、そして受け取り方によって一時所得控除や退職所得控除を受けられるなど全体的に運用を始めておくに越したことがないメリットも多数揃っています。公的年金だけでは不安を抱える世帯も多くなっている中で、このような制度の存在は非常にありがたいと言えます。2017年からは、iDeCoの愛称で個人型確定拠出年金の適用範囲も広まり主婦の方なども利用することが可能になるなど、確定拠出年金は今後も多くの資産を考える世帯の味方になることは間違いないでしょう。この機会にぜひ始めてみてはいかがでしょうか!

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