年金は学生でも納付を!老後の備え以外にも考えるべき公的年金

国民年金制度は、その制度の仕組みの関係で学生のうちからでも保険の納付義務があります。年度ごとに差異はあるもののそれなりの金額を負担しなければならなくなるので、毎月の家計には大きな影響を与えるものです。しかし、その制度の仕組みと今後社会へ羽ばたく学生という立場を考えると、単に老後の備えだけではない保障も兼ねていて、とても有益なものになると言えます。今回は、学生と年金制度の接点について紹介します。

20歳になったら国民年金支払いが義務


まず、国民年金は20歳以上60歳未満という区分で、毎月の保険料の納付義務が発生します。この年齢に該当していれば、サラリーマンや公務員、主婦、そして学生だろうと対象となります。なお、学生は国民年金の第一号被保険者に該当します。

そして、気になるのが納付しなければならない保険料ですが、平成29年度は16,490円となっています。しかし、これは年度ごとに変動する場合もあるので、日本年金機構での定期的なチェックはしておきましょう。

学生の納付割合は?

国民年金を知るうえで気になることとしては、学生がこの保険料に対してどれだけ支払いを行っているのかと言うことは想像できるかと思います。それはしっかりと、厚生労働省が発表している国民年金被保険者実態調査結果によって発表されています。

その内容によれば、学生の納付率は平成26年度の時点では下記の通りです。

・納付率:22.2%
・滞納者率:9.1%
・学生納付特例制度の加入による免除:66%
※学生納付特例制度については後述記載しています。

このように、全体の約2割程度しかきちんと納付されていない現状があります。確かに学生納付特例制度を利用することよる支払免除も多いですが、それでも全体の1割はその申請も行わずに未納している状態が続いています。

学生時代の未納を放置すると

この未納を続けていくことで下記の事態を招く恐れがあります。

■老後に受け取る年金が減る
実は、学生納付特例制度を利用して免除が起きていたとしても、それは「待ってもらっている状態」となっています。つまり、納付そのものはやらないといけないということになります。結局のところ、待ってもらった分すらも納付しない限り、老齢基礎年金がその分だけ少なくなってしまうということです。

この状況をどうにかするためにも、国民年金保険料を後から納付できる追納の手続きは早めに行っておくに越したことはありません。手続き自体は、年金事務所にて行うことができますので相談しに行ってみましょう。

■障害基礎年金が受け取れなくなる可能性が
学生納付特例制度の申請をしておけば、万が一の事態が起きて障害を抱えてしまった時でも障害基礎年金が受け取れます。実は、学生納付特例制度の効果としては保険料免除以上にこちらの方が大きいと言えます。

しかし、この状態をもし学生卒業後にも放置して未納のままにしておけば、受給ができなくなってしまいます。若いうちであっても予想していない事態が起きた時のことを考えると由々しき事態です。

もっとも、学生を卒業したら就職先の会社で厚生年金を毎月給与から天引きされるのが通常の習わしなので、この事態はそう起きるものではありません。問題は、「就職等をせずに国民年金加入者のまま放置をしていた場合」となります。

年金を追納する方法「学生納付特例制度」


年金未納となると減額や受給不可といった影響が起きますが、それを回避するためにはきちんと納付することに加えて、追納という方法も知っておくと良いでしょう。特に学生は学生納付特例制度のことを知って活用しましょう。

学生納付特例制度について

もともと、学生は社会人と異なり十分な収入がありません。

そんな状況でも、1991年4月から20歳以上なら強制加入になったことで、毎月1万以上の保険料の納付義務が生じました。しかし、それが経済的に大きな負担になることを考慮して、2000年4月よりこの制度が導入されました。

現在では、専門学校や大学など一般的に20歳以上の学生を抱える教育機関などでも積極的に学生に推奨するくらい定着しています。

収入のない学生も制度の利用で安心

この制度の対象となる学生は下記の通りです。

・大学、大学院、短期大学、高等学校、高等専門学校、専修学校、各種学校、その他、政令で定められた教育施設に在籍している20歳以上60歳未満の生徒や学生であること
・学生本人の前年所得が一定基準以下であること

一般的に生徒や学生はアルバイトなどであっても、所得は決して多くはありません。そのため、教育機関に通っていることでほとんど安心して制度の利用ができる環境にあることが、この対象区分から伺えられます。

ただし、次の場合は制度の対象外となっていますので注意してください。

・学校法人の認可がない一部各種学校、予備校、上記対象校の学生や生徒であること
・海外の学生であること

なお、この場合は一般の保険料免除もしくは若年者納付猶予制度があるので、そちらをぜひ利用することをおすすめします。

対象となる学生の所得目安は?

しかし、学生とて所得次第で学生納付特例制度の利用ができなくなる可能性もあります。その具体的な所得は、「前年所得が118万円以下」であることが挙げられます。

もう少し詳細を語ると、所得と書いてあるので収入が194万3,999円までなら、ここから税金などの控除などによって118万円以下となり対象となります。逆にこれを超えてしまうと学生納付特例制度の対象外となると言うことです。

学生納付特例の「所得」118万円とは?

前述の通り「前年所得が118万円以下」と書きましたが、より分かりやすく給与所得控除額を加味して説明します。

まず、おおよそ収入の40%が控除額となります。そして、例えば170万円の収入があったとした場合、170万-68万(170万×40%)=102万円となります。

この結果、118万円に満たないため、学生納付特例制度の利用が可能となります。ただ、学生のうちから170万を超える収入を得ることは、時給の高い地域などでは比較的起きやすい可能性があるので、その点には注意して下さい。

申請手続きの方法は?

学生納付特例制度の利用することで納付免除や障害基礎年金の受給資格が守られるなど、積極的な利用が教育機関などでは推奨されています。しかし、この制度の対象となるためには、次の通りの手続きが必要となります。

1.申請書を入手する


まず、申請書を入手しましょう。正式名称は、「国民年金保険料学生納付特例申請書」と言い、次の施設から入手することができます。

・住民票の登録のある市(区)町村の役所の国民年金窓口
・年金事務所

その他、日本年金機構のホームページなどからPDFデータをダウンロード印刷して入手することもできます。

なお、本書類の記載事項は次の通りです。

・基礎年金番号
・氏名
・生年月日
・電話番号
・申請期間
・在学予定
・学校の名称
・税申告の有無
・特例認定区分
・備考

記入欄や記入例以外にも、注意事項、申請書の提出先、申請書提出後の注意点なども記載されているので問題なく記入できるような書式となっています。

2.申請書を提出する

申請書に必要事項を記入したら、住民票を登録している市(区)町村の役所の「国民年金窓口」に提出します。

また、申請書以外にも下記の書類が必要となりますので、事前に準備をしておきましょう。

・有効期間の記載がある「学生証(写し)」または「在学証明書(原本)」
ただし、申請手続きを行う際に市区町村役場の窓口で直接これらを提示する場合は添付が不要であること、各種学校(国民年金法施行規則第77条の6第1号「学校教育法第134条第1項に規定する各種学校(修業年限が1年以上である課程に限る。))にあっては、修業年限が1年以上の課程に在学していることを証明する書類(在学証明書等で証明できる場合は必要ありません。)を添付することなどと言った点に注意してください。

・国民年金手帳
これは、初めて国民年金の資格を取得する場合は不要となります。

・失業によって申請する場合、雇用保険受給資格者証または雇用保険被保険者離職票等の写し

3.審査結果の送付(申請後2~3カ月)

書類を準備して提出も済ませたらあとはしばらく待ちましょう。

おおむね審査結果は2~3カ月後に申請者の住民票に記載された住所に郵送されてきます。期間中は免除申請の審査中と言うことも、催促状などが届いたとしても納付の必要はありません。

なお、仮に審査が却下されてしまってもこの機関の納付は後から行うことはできます。

申請手続きのタイミングと手続き期限

学生納付特例制度の申請の手続きに関するタイミングと期限ですが、制度上では、「20歳になってから申請時点の2年1カ月前の月分まで遡って申請できる」と決まっています。もちろん、贈れてしまうと前述の通り、万一、障害を負った場合などでも障害基礎年金などが受給できなくなります。だから、早めに申請しておきましょう。

追納について

前述の通り、学生納付特例制度を利用したところで最終的には追納をしなければ、満額の老齢基礎年金の受給ができません。しかし、そこでも注意しないといけない点があります。

学生猶予の追納手続き期限は10年

実は追納には期限が10年と決まっています。具体的には、「追納が承認された月の前10年以内の免除等期間」となっています。そのため、これを過ぎてしまうと追納ができなくなります。

例えば、2007年4月に申請して免除をした場合は2017年4月までに追納をしないといけないと言うことになります。

また、学生納付特例制度の承認を受けた期間の翌年度から起算して、3年度目以降に保険料を追納する場合は、承認を受けた当時の保険料額に経過期間に応じた加算額が上乗せされる点にも注意しましょう。

なお、それも考慮された2017年度中に追納する場合の追納額は次の通りです。目安として覚えておきましょう。

・2007年度の月分:追納額15,040円(当時の保険料14,100円)
・2008年度の月分:追納額15,160円(当時の保険料14,410円)
・2009年度の月分:追納額15,250円(当時の保険料14,660円)
・2010年度の月分:追納額15,510円(当時の保険料15,100円)
・2011年度の月分:追納額15,290円(当時の保険料15,020円)
・2012年度の月分:追納額15,140円(当時の保険料14,980円)
・2013年度の月分:追納額15,120円(当時の保険料15,040円)
・2014年度の月分:追納額15,270円(当時の保険料15,250円)
・2015年度の月分:追納額15,590円(当時の保険料15,590円)
・2016年度の月分:追納額16,260円(当時の保険料16,260円)

2015年度と2016年度は、追納加算額はありません。それ以外の年度は追納額が前述のことを反映された額となっています。

追納しないとどうなる?

もし、追納しなければ、老齢基礎年金の受取額が年間5%減少(計算上では1年間で約2万円、2年間なら約4万円と言われる金額)が減額されます。

2017年度の老齢基礎年金は779,300円となっている中で、2年間放置をしただけで毎年4万円減の年金受給が一生続くことになると、とても生活が困難になるのは容易に想像できます。ましてや、老齢基礎年金は年々下がっていくなかなのでなおさらです。

また、計算をしてみると上記を裏付ける結果となり、影響が決して低くないことがよりはっきりと分かります。

例えば、2年間分の追納額を約39万円(厳密には、16,490円 × 24カ月 = 395,760円ですが計算しやすいように約39万円とします)とします。そこに年間の老齢基礎年金の減少額4万円を「老後に増える年金額」として追納額から除します。つまり、「39万 ÷ 4万円 = 9.75」となります。この「9.75」という値は年数のことで、訳すと9年9カ月となります。

この結果、追納分の約39万円を納付しても、年金受給が始まって約9年9カ月生存していれば元は取り返せる上、それ以上の生存なら逆に追納しなければ損をすることが分かります。年金受給年齢は現時点では65歳からとなっている以上、この数字を足して「74歳9か月以上は長生きするつもりだ」と考えれば、追納したほうが老後の生活を安心して送ることができるようになると言うことです。

また、追納した国民年金保険料も、納付してきた保険料と同様に「社会保険料控除」の対象となります。その点も見逃せません。

学生時代の年金が未納の場合の対処方法

ただ、一概に10年して追納期間が過ぎてしまったから、絶対に満額受給ができないのかと言うと実はそうでもありません。それを想定した年金制度もあります。

それは国民年金の任意加入制度です。具体的には下記の通りです。

制度の目的は、「60歳までに老齢基礎年金の受給資格期間を満たしていない場合、40年(480か月)の納付済期間がないため老齢基礎年金を満額受給できない場合であって、厚生年金・共済組合等に加入していないときは、60歳以降(申出された月以降)でも任意加入することができる」というものです。ただし、さかのぼって加入することはできません。

また、下記の方も任意加入することができます。

・年金額を増やしたい方は65歳までの間
・受給資格期間を満たしていない方は70歳までの間
・外国に居住する20歳以上65歳未満の日本人

つまり、「60歳以降に「任意加入」という形で年金保険料を納付することで、老齢基礎年金の満額受給資格期間を満たすことが可能である」ということです。

あと、支払方法については、「国内にいる親族等の協力者が本人の代わりに納付するという方法」もありますが、2008年4月1日からは、「外国に居住する20歳以上65歳未満の日本人」を除いて、保険料の納付方法は「口座振替」が原則となりました。そのため、コンビニや年金事務所などで毎月納付の必要もなくなるので、支払いは便利になりました。

では、この制度の申込ですが、日本国内に居住している方であればお住まいの市区役所・町村役場にて申込可能となります。もちろん、現状の納付状況なども確認して本当にこの制度を利用する必要があるのかどうかという点を確認してから申込に行きましょう。

以上のことから、「学生の時に学生納付特例制度を利用してきたので、追納の必要が出てきたけどうっかり納付するのを忘れてしまって満額がもらえない」と困っている方にはこの制度を利用して、満額受給ができる準備をしておくことが可能となります。

もちろん、一番いいのはこの制度を利用する前に追納を行っておくこと、もっと端的に言えば学生の立場でも納付自体はしっかりと行っておくことになります。

まとめ

学生ならではの特典とも言える学生納付特例制度ですが、きちんと制度を知っておかないと追納を見逃して、満額受給や障害基礎年金の受給ができなくなるなどの事態を引き起こす恐れがあります。当然、国もそうならないように任意加入制度などの第二段階とも呼べる配慮はしていますが、自身の老後や万が一の事態を想定した年金制度である以上、やはり一人一人が制度のことを知って現状の納付状況を把握しておくことが必要となります。

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