年金を払わないとどうなる?差し押さえの可能性も!

年金制度と言えば、管理元の日本年金機構においての2015年に125万件に及ぶ個人情報が流出した不祥事、そして国民年金の対象者の約3割以上におよぶ未納問題など幾多の問題を抱えています。しかし、年金の仕組み自体は、老後の生活形成のみならず資産運用など多くの生活の場面において欠かせないものだと言えるものです。よって、特に「未納」の状況は早期解決をしておかないと、万が一の事態になった時に取り返しのつかないことにもなりかねません。そのため、今回はその年金制度の仕組みと未納を続けた場合に想定される事態などを紹介します。

年金制度とは?


まず年金は大きく分けて国民年金と厚生年金の2つがあり、そのうち国民年金は、原則日本国内に住む20歳以上60歳未満の全ての人に加入義務があります。つまり、この国に住んでいる限り保険料を納付して受給できる準備が必要です。しかし、その納付状況については次の通りとなっています。

国民年金保険料の納付状況は?

日本年金機構が発表している「国民年金保険料の納付状況と今後の取組等について」を基に比較的最近の推移および傾向を見てみましょう。

●推移

1.1996年度までの現年度分の納付率:82.9%と80%台を超えていたが、1997年以降は79.6%と下降し、それ以降の年度もその傾向は続いた
2.2001年度:70.9%と70%台をかろうじて維持するまでに落ち込んだ
3.2002年度:62.8%と60%台にまで落ち込んだ
4.2011年度:過去最低となる58.6%にまで落ち込んだ
5.2013年度:再び60.9%と60%台に回復した
6.2014年度:さらに2.2%伸びて63.1%に回復した
7.2015年度:前年度よりも0.3%と微増して63.4%となった

●傾向

長らく日本の年金に対する納付率は80%を超えるものでしたが、バブル崩壊以降の長引く不況や多様な価値観の登場などとみられる要因によって、徐々に落ち込んできたことが分かります。そして、2002年度以降70%台に納付率が到達していないのは、まさに制度の根本的な見直しが早急にあるという見方もできます。

なお、2011年度で過去最低の納付率を記録したのは東日本大震災の影響であること、そして、そこから長い時間をかけてようやく以前の水準になりつつあることが伺えられます。

しかし、納付率の計算は低所得などを原因として保険料の免除や猶予などを受けている人は除外されているため、国民年金保険料を納める義務がある人を全体でみた場合の納付率は40.6%となるため、まだまだ予断を許さない数字と言えます。

以上の結果から、今後も50%後半から60%前半くらいの納付率で推移していく見通しです。

年金未納だと差し押さえの可能性も!?

このように国民年金保険料の納付率の低下と未納率の上昇が問題になっています。

そして、未納をしていてそれが慢性的に続いている状態が長期化すれば、下記の区分に基づいた「強制的な資産の差し押さえ」という極めて重い処分が待っています。

●強制徴収される対象者

・2015年度以前:所得が400万円以上ありながら7カ月以上保険料未納となっている者
・2016年度:所得が350万円以上ありながら7カ月以上保険料未納となっている者
・2017年度:所得が300万円以上ありながら13か月以上保険料未納となっている者
・2018年度以降:所得が300万円以上ありながら7カ月以上保険料未納となっている者

この区分の決定は、厚生労働省と日本年金機構が定期的に見直しをしたうえで発表しています。

●差し押えされる主な資産

・預貯金
・売掛金
・給与
・生命保険解約返戻金
・自家用車

その他にも「資産価値があるもの」と判断されたものは対象となります。

●傾向と注意点

このように強制的な差し押さえに関する区分は段階的に厳しくなっています。もちろん、狙いは低迷している国民年金の未納率の改善のためです。この流れは、2016年1月に施行されたマイナンバー制度の存在もあって、より厳しい動きになっていくことが予想されます。

差し押さえされる資産も、預貯金や給与などはもちろん自動車など、毎日の生活を送るうえで重要なものが差し押さえの対象となります。当然、実行されたら生活に大きな影を残すため、その前にきちんと対応することで回避する必要があります。あと、差し押さえた資産は公売にかけられる可能性があることに注意しましょう。

差し押さえになるまでの流れ

このように強制的な資産の差し押さえは絶対に回避しなくてはならないものですが、具体的にどのような流れで差し押さえに至るのかを紹介します。

年金未納だと催告状が届く


まず、保険料の徴収を担当している日本年金機構が、滞納者に対して文書や電話、訪問などを行って接触をして納付するように求めてきます。

しかし、これらに対してきちんと応じなかった場合は、後日指定の期日までに納付する旨が明記された納付書が郵送されます。この納付書は銀行や郵便局はもちろんコンビニエンスストアでも支払えるタイプなので、できるだけ納付しやすいように配慮された作りとなっています。

それすらも応じなかった場合は、今度は催促状が郵送された上、場合によっては委託された民間業者から電話連絡が入る場合もあります。この催促状にも「特別催促状」と言う最終の一歩手前の催促状と呼べるものが郵送される場合があります。

それでも未納を続けると督促状が届く

しかし、催促状にも応じなかった場合は、ついに資産を差し押えする旨が明記された督促状が送付されます。これは法的にも手続きが取れてしまう段階に来たと言うことです。

たいていはこの段階になれば、最寄りの年金事務所などに相談しに行って、支払いなどについて相談します。

なお、年金事務所に支払いの相談をしていくと「年金保険料の免除申請」の提案をされることが多いです。これは、正式名称は「国民年金保険料免除・納付猶予制度」と言って、経済状況や家庭の事情、本人の事情などを考慮して、一定期間免除ができる申請をすることができる制度で下記の免除の区分に分けられます。

・全額免除
・4分の3免除
・2分の1免除(半額免除)
・4分の1免除

この制度の利点としては、下記の通りです。

・上記の保険料免除期間も合算対象期間、保険料納付済機関と共に受給資格期間に算入されるため「合法的に保険料支払いが免除される」という扱いを受けることができる
・申請期間はおおむね1~2か月程度かかり、その間は納付の必要がなくなる

このように、下手に督促状までもが届くくらい未納の状況を放置するよりも、一旦年金事務所に相談した上で免除申請の手続きを取ってみましょう。もちろん、可能であればこの段階までには支払いを済ませてしまうに越したことはありません。それに督促状が届いた段階ではまだ延滞金はかからないため、早めに済ませることも考えてみましょう。

最終的に差し押さえ

督促状ですらも無視し続けると、ついに差し押さえに関する動きが本格的に始まりますが、執行までの主な流れ、実際の差し押さえの件数、あとはその他の補足事項などを紹介します。

●執行までの主な流れ

1.収入および資産価値のあるものが精査される
2.支払能力および資産を保有していると判断される
3.差し押さえが執行される

●実際の差し押さえの件数

・2015年4月〜2016年2月分:5,844件(最終催促状8万4,656件、督促状4万1,990件)
・2016年4月〜2017年2月分:1万2,690件(最終催告状8万5,098件、督促状4万9557件)

かつてはこれの半分以下だった差し押さえの件数を考慮すると、それに対して強化されている実態を裏付ける数字であると言えます。

●その他の補足事項

・特に2010年代からは、強制徴収に対する人員増加によって強制徴収の実施が強化されている
・保険料徴収に関する時効の扱いも「督促状」が郵送された時点で中断するようになっているため「放置すれば追跡を振り切れる」という認識が通用しなくなっている
・滞納している保険料に対しては「14.6%の延滞金」が課せられる
・国民年金保険料の連帯納付義務者(配偶者など)がいる場合は、そちらも処分の対象となる場合がある

以上のことから、督促状が来る前には免除申請なり納付をする努力といった誠実な対応をしていきましょう。

年金未納の場合、保障はどうなるの?

国民年金は、保険料を納付していて初めて受給が可能となります。そのため、未納であることを理由に次のような保障に関する制約が起きます。

老後の年金は減額

国民年金は20歳以上60歳未満というルールがあるため、納付義務期間は必然的に40年(480月)となります。

これが「年間の満額×(480月-未納月)÷480月」で計算されます。

ただし、そこにもし未納期間が5年の場合は満額よりも月マイナス1万円、15年の場合は満額よりも月マイナス2.5万円ほどの減額になります。将来の老後の生活の糧となる年金が減額されてしまうのは回避したいところです。

障害年金の保証も受けられなくなる可能性がある


また、万が一、不慮の交通事故などに遭遇し、身体の障害を抱えてしまったとしても、未納であることを理由に障害年金の受け取りができなくなります。そうなれば、訪問介護や入浴などのサービスも自己負担となってしまうので大きな経済的負担になります。

仮に民間の保険会社の生命保険から保障が降りたとしても、終身保障ではなく確定または有期保障であればいずれは終わりが来てしまいます。そういった点を考えると障害年金の受給が受けられないのは大きな損失です。

こういった点からも未納をすることは回避しましょう。

なお、障害年金の保険料納付要件も紹介します。これに現状の納付状況を当てはめてみるのもいいでしょう。

●保険料納付要件
1.初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間の3分の2以上の期間について、保険料が納付または免除されている
2.初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がない

初診日の前日において、上記のいずれかの要件を満たしていることが必要です。
※20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合は、納付要件はありません。

まとめ

年金保険料の未納は、差し押さえというリスクを常に抱えるだけでなく、万が一の事態が起きて生活環境が一変する事態となった時でも、保障がされないために生活を送ることが困難になるなどが十分想定できます。度重なる年金に関する不祥事もあって「この先どうなるのか分からない制度」と言った厳しい見方もありますが、それでも支給がされて生活を維持できている世帯も多数いることも忘れてはなりません。

今回の内容を踏まえて、未納を回避してより良い生活設計をしていく努力をしていきましょう。

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