役員の退職金はどのようにして決まる?役員の退職金相場も紹介!

会社の役員と聞くと、「経営陣として会社全体の運営をしていく立場」のイメージが多いと思います。実際、大きなお金が動く新規の提案があった時など、会社全体の承認が必要になってきますが、その際は社長に加えて役員などが関わってきます。

そのような役員たちが毎月どのくらいの金額を会社から受け取っているのか気になる人もまた多いはずです。これは退職金に関しても同様と言えるでしょう。そもそも、退職金がどのような仕組みで決められているのか、そしてどのくらいの金額が相場としてあるのか考えるとなおさらです。今回、そんな役員の退職金について色々と紹介します。

役員の退職金は?


文字通り役員の退職金とは、会社の上層部にいる人たちが会社を去る時に受け取るお金で、「退職慰労金」とも呼ばれています。金額はもちろん、その仕組みとかは一般の会社員とかとは明らかに違う部分があります。その点を留意してください。

役員の退職金に決まりはない

実は、役員の退職金には決まりはありません。自由に退職金の金額を決めることができます。これは労働基準法などの労働に関する法律の明文の中でも、「役員に対して退職金を支払うこと」を義務として記載していないことから言えることです。

そのため、「退職金支給規程」といった定款を設けて、支給時のことを取り決めることが多いです。これは、会社内で円滑に進めるだけではなく、税務署から万が一の対応を迫られた場合のことを想定したマニュアルの一面もあります。まさに備えあれば患いなしです。しっかりとしたルールを設けて不測の事態にも対応できるようにしておきましょう。

高額すぎる金額は不可

ただし、定款の有無に関係なく、あまりに大きい金額に設定すると下記のトラブルを招く恐れがあります。

(1)損金算入の対象外となること

(2)社内外から、「金額が大きい」と批判の対象になり得ること

役員は会社の代表の一人である以上、その威厳は保ちつつもあくまでクリーンな印象を持たれるようにしなければなりません。だから、それに反しないように留めておくのがベストですね。

ちなみに、この役員の退職金に関して参考になるデータが、「総務省の人事・恩給委託調査(民間企業における役員退職慰労金制度の実態に関する調査)」です。これによれば、役員の退職金を導入している会社は全体の半数に及びます。ただし、会社の規模が小さいほど導入を見送っていることも読み取れます。もちろん、他にも色々と参考になる情報が記載されているので、一度目を通してみて下さい。

ただし株主総会での決議が必要

役員の退職金は、前述の通り、法的な制限がないもののあまりに高い金額であれば損金算入と常識的な観点から問題になりがちです。では、それさえしっかりと決めればいいのかという疑問が起きますが、それは当然違います。実は他にも乗り越えないといけない問題があります。それは、株主総会での決議が必要になることです。役員の退職金が決定されたとしても、ここで否決されたら白紙撤回になり、最悪の場合、「退職金なし」となることもあります。

このような体制がある理由としては、「在職中の会社の功績に対する対価」の性質を持ち、報酬とみなされることが挙げられます。また、株主からの質疑応答を経て退職金の金額に問題がないかと監視の意味もあり、その他にも、定款だけではなくしっかりとした人が集まる場で取り決めを行うことで周囲の信頼を得る意味もあります。役員の退職金の具体的な金額は後ほど紹介しますが、役職についていない会社員ではあり得ない金額です。だからこそ、慎重かつ厳しい審査を潜り抜けて決められているわけです。

金額については役員の功績で決められることが多い

これは役員だけではなく、会社に在籍するすべての社員に対しても言えることですが、功績が金額を決める上で最大の焦点になります。つまり、会社に対してどれだけ売上や優秀な人材確保ができたのかと言った評価で決まってくると言うことです。

また、在籍期間が長引くほど役員在任期間(後ほど紹介)も大きくなるので、結果として役員の退職金が上がっていきます。

役員の功績で退職金を決める方法とは?


さて、役員の退職金に功績が絡んでくることが分かりましたが、具体的にはどのような形で決められるのかに入ります。先に述べると、専門の計算式がはっきりと存在します。ただし、その計算式を構成する重要なポイントを先に紹介します。

功績倍率を用いる

まず、役員の退職金の計算式に登場してくる功績倍率と呼ばれる係数があります。

功績倍率とは任期中の功績を貢献の度合いとして倍率に置き換えた数値

見出しでは少し長い表現なのでもう少し分かりやすく表記し直すと、「社長や役員と言った役位に応じて決められた倍率」ということです。これは、一般の会社員の退職金の計算式では採用されていない役員ならではの特典と呼べるでしょう。

そして、役位が高くなればなるほど倍率が上がっていきます。「功績」の言葉を使っている以上、「役位が上がっていくことで倍率が上がっていく = 会社に貢献してきた人材」とストレートに分かりやすい意味が込められていることが分かります。

なお、下記の功績倍率が例として挙げられますが、あくまで一つの例で会社ごとに数字が異なる点に注意してください。

(1)社長:3.0~3.4倍

(2)専務と常務:2.2~2.7倍

(3)取締役と監査役:1.2~2.0倍

功績倍率を用いた退職金計算方法


では、具体的な役員の退職金の計算式ですが下記の通りです。

最終役員報酬月額 × 役員在任期間 × 功績倍率 = 役員の退職金

このうち、最終役員報酬月額とは、「退任直前までの役員の給与」を意味しますが、「退職直前」の位置付けを意識させるために、「最終」の文字を利用している点が上手い表現です。ちなみに、退任直前にこの金額をアップさせることは私的な理由と判断されて難しいとされています。確かに、定款と株主総会の決議の決議を通過した金額を直前に変更させることは、常識的に考えても不自然なことと捉えられる可能性があります。

また、役員在任期間とは、「在任していた期間」とその通りの意味ですが、「いつから在任が開始されたとみなすべきか」については議論されがちです。一般的には、登記簿謄本の記載内容が基準となりますが、登記はしていなくとも、すでに役員として携わっていたと証明できる資料がある場合は、「その時から実質的に役員であった」と認められることがあります。よって、「登記されていないまま5年間役員として携わってきた」といった事例があったと仮定して、それが資料などから証明されれば認められることもあり得るということになります。一般の会社員も、勤続年数が小数点以下であれば切り上げる優遇策(38.6年であれば39年)を設けていますが、役員の役員在任期間はそれ以上の優遇策であることが伺えられます。

では、計算がどうなるのか下記の事例で算出してみましょう。

(1)最終役員報酬月額:50万円

(2)在任期間:20年

(3)功績倍率:5倍

この場合は、「50万円 × 20 × 5 = 5,000万円」となります。よく、役員退職した世帯がセカンドライフ形成のために新たに自宅を購入したという話を聞くことは珍しくないですが、この金額を見れば確かに現実味を帯びます。

役員退職金の相場は?


前述の事例で算出された金額は5,000万円とそれなりの金額になりますが、実際はどのくらいが退職金の相場なのか紹介しましょう。

平均では下記の通りが多いです。

(1)会長:3,600万円前後

(2)社長:3,500万円前後

(3)専務:2,500万円前後

ただし、これは平均ですので1億を越えるケースも珍しくありません。

例えば、最終役員報酬月額が100万円、役員在任期間が35年間の任期、功績倍率が3倍の場合で計算してみると1億500万円と算出されます。これはたとえ中小企業であってもそれなりの資本力があれば珍しくはない数値です。それに、役員在任期間が20年であることも一般的には珍しくはない期間です。中には半世紀以上在任した役員も存在しています。よって50年となれば1億5,000万円となり、最初に挙げた事例よりもはるかに大きな差が開きます。はたしてこれが高いか安いかという話もありますが、損金算入上では問題なく、定款や株主総会の決議でも認められていれば、基本的には問題がないということになります。

ただし、役員と言っても非常勤の立場の方もいます。その人たちは、常勤でない以上は役員の退職金がないということもあります。これは、「この役員の退職金はこの金額となったけど株主総会の決議で否決されたため退職金なしとなった」ではなく、「もともとありません」という点が異なります。

まとめ

役員の退職金の仕組みと相場、あとは関連する周辺の情報を紹介してきましたが、算出する際に使用される計算式と求めた退職金と一般的な相場の関係など、いずれの点において一般の会社員と明らかに違っていることが分かりました。

役員在任期間は一般の会社員の勤続年数に該当しますが、在任を開始した時からだけではなく、実質的に在任をしたことが確認できる資料があればその時点から開始と認められること、さらに最終役員報酬月額は直近まで支給されていた給与として見なすこと、そして極めつけは役員の退職金でしか採用されない功績倍率の採用していることなどがそれに該当します。

こういった優遇を設けて役員と会社員との違いを明確にすることで、経営の引き締まりを狙っていることが伺えられます。

ただし、それは同時に会社の代表の一人としてあるべき姿も求められる期待感の表れという見方もできます。そのためにも、日頃から会社員が安心して業務が邁進できる環境作りを行っていくことが課題と言えるのではないでしょうか。会社員も役員の退職金のことを知ることで、自分たちが勤務する会社の体制を読み取ってみるのも一つの社内貢献として考えてみてはいかがでしょうか。

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